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2014年8月、京都市内を南北に流れる鴨川のほとりに誕生したのが「ザ・リッツ・カールトン京都」だ。平安時代の都の造営概念「四神相応」を取り入れた日本庭園を館内の随所に配置。京都の景観に見事に溶け込んだラグジュアリー空間は祇園や先斗町にも近い二条大橋のたもと、大文字の送り火で有名な如意ヶ嶽など東山三十六峰を一望できる最高のロケーションにある。 エントランスでタクシーを降りると、まず作庭家野村勘治氏による「朱雀」に着想を得たエントランスエリアを通って館内へと向かう。鴨川のせせらぎのような水の流れと、モミジとサクラ。「南」を守る神鳥、朱雀は旅人を暖かく迎えてくれると共に、今後の旅の安全も祈願してくれるのだろう。
Ritskyoto_02 「ザ・リッツ・カールトン京都」は17室のスイートルームを含む全134室。平均で50平米を超える広々とした客室空間は、京都市内中心部にあるというのに実に贅沢だ。今回泊まるのは鴨川に面した「グランド デラックス カモガワ リバービュー」。床から天井まで大きく取られたピクチャーウインドウの向こうには鴨川、そして東山の山並みが見える。窓際には五葉松の盆栽が乗せられた飾り棚とティーテーブル、2脚のアームチェア。どことなく日本旅館を思わせるインテリアも窓越しの景色と実によく馴染んでいる。バスルームは2名での滞在も快適にしてくれるダブルシンクでアメニティはロンドンのアスプレイ製だ。


6席限定完全予約制の「シェフズ・テーブル by Katsuhito Inoue」

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「ザ・リッツ・カールトン京都」のダイニングは会席、寿司、天麩羅、鉄板の4つのセクションで構成された日本料理「水暉」、イタリア料理「ラ・ロカンダ」井上勝人エグゼクティブシェフによる6席限定完全予約制の「シェフズ・テーブル by Katsuhito Inoue」、アフタヌーンティが楽しめる「ザ・ロビーラウンジ」、そして食前酒から食後酒までオリジナルカクテルでゆったりとした時間を過ごせる「ザ・バー」からなる。予約困難ながらも一度は試してみたいのが「シェフズ・テーブル by Katsuhito Inoue」だ。
「シェフズ・テーブル by Katsuhito Inoue」は「ラ・ロカンダ」最奥部にある個室ダイニングで、実業家・藤田傳三郎の京都別邸「夷川邸」を移築、書院作りの特別な空間だ。定刻通りに個室に通されると、大きな木製のテーブル上にはびっしりと苔が敷かれ、桜がひと枝活けてあった。これは「ザ・リッツ・カールトン京都」の庭師、鈴木耕喜氏が毎日作り直す一夜限りのしつらい。いやがおうにも期待は高まる。

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料理は繊細な季節の移ろい、七十二候にあわせた旬の食材によって井上シェフが決めるおまかせコースだ。生産者とのつながりを重要視する井上シェフは、その時期にしか食べられない食材を、イタリア料理をベースとしたイノベーティブなオリジナル料理に仕上げてくれる。この夜登場したのは毛ガニ、タケノコ、アナゴ、白アスパラガス、鴨、そら豆、ユリ根、子羊、和牛、白子、ウニ、イチゴなど全部で12皿。その時期に最も美味しい食材がフリット、スープ、炭火焼、ボイル、リゾット、グリルと最適の調理法が施されて次々に運ばれてきた。溜息と感嘆の連続で食事を終えて部屋に戻り、キングサイズのベッドに身を横たえたあとも溜息がしばらくとまらない、それほど素晴らしい料理だった。
Ritskyoto_05 翌朝は早起きして「ザ・リッツ・カールトン スパ」へ。ここは20mの屋内プールがあるのだが、まだ誰もいない温水プールで泳ぐひとときはまた格別。身支度を整えて朝食は「水暉」へ。この日は京都ならでは優しい味付けの和食を堪能したのだが、最後にサービスの女性がパン・オ・ショコラをひとつ持ってきてくれた。これはレセプション脇にある「ピエール・エルメ・ブティック」で毎朝焼かれる特別なペイストリー。なによりも細やかな心配りが心に染み渡る。後日発表された「フォーブス トラベルガイド」で「ザ・リッツ・カールトン京都」は5年連続5つ星ホテルの称号を獲得したのだが、それも納得のホスピタリティ。京都の中心部にいるというのに、街に出る時間が惜しくなるほど。できればチェックアウトの時間ぎりぎりまでホテルにいたい、そんな気持ちにさせてくれるのだ。

Photo&Text Masakatsu Ikeda

restaurant information


Rits_kyoto220627_main ザ・リッツ・カールトン京都

住所:京都府京都市中京区鴨川二条大橋畔
Tel:075-746-5555
客室数:134室
チェックイン:15:00~24:00、チェックアウト:12:00

profile


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池田匡克 ジャーナリスト、イタリア料理愛好家

1967年東京生まれ。1998年よりイタリア、フィレンツェ在住。イタリア国立ジャーナリスト協会会員。イタリア料理文化に造詣が深く、イタリア語を駆使してシェフ・インタビュー、料理撮影、執筆活動を行う。著書に『伝説のイタリアン、ガルガのクチーナ・エスプレッサ』『シチリア美食の王国へ』『イタリアの老舗料理店』『世界一のレストラン オステリア・フランチェスカーナ』など多数。2014年イタリアで行われた国際料理コンテスト「ジロトンノ」「クスクス・フェスタ」などに唯一の日本人審査員として参加。2017年イタリア料理文化の普及に貢献したジャーナリストに贈られる「レポーター・デル・グスト」受賞。WebマガジンSAPORITA主宰。
イタリアを味わうWebマガジン「サポリタ」
http://saporitaweb.com//
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