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(写真)復元された「平戸オランダ商館」前には今もオランダ国旗が風になびく。
西洋文化が初めて日本に入り、発展した街として名高い長崎。かの地には今も異国情緒が漂うエキゾチックな雰囲気がそこはかとなく漂っており、いつの時代も旅人を古の時へと誘ってくれる魅力にあふれている。 特に長崎市北方約80kmに位置する平戸市は鎖国前には中国、オランダ、ポルトガルなどとの国際貿易港として栄えたことで名高い。日本におけるキリスト教発展の地としても歴史的に重要で「平戸の聖地と集落」は世界文化遺産にも指定されているほどだ。地形的には北は玄界灘、西は東シナ海に接しており、平戸島と周辺に点在する大小約40の島々は九州でも屈指の海産物の宝庫だ。

異国情緒が残る街並みと文化sen

fukui_01ph01(写真)平戸市中心部には、江戸時代の木造建築が軒を連ねる一角がある。

01 平戸オランダ商館

かつて貿易で栄えた平戸の面影を色濃く伝えているのがオランダ商館だ。1609年にオランダと正式な国交が結ばれた際に平戸に設置されたが間も無く取り壊され、1641年には長崎の出島に移転。期間は短かったものの平戸の歴史に重要な足跡を残した。その後360年の時を経て日蘭通商400周年を期に復元計画が進み2011年には当時の倉庫が復元され「平戸オランダ商館」として新たにオープンした。館内には世界各地から収集された貴重な絵図や書物、絵画、航海用具、武器等が展示され当時の様子を伺うことができる。
fukui_01ph01(写真)「平戸オランダ商館」内には古いカステラの絵や、当時の貿易船の模型が展示されている。

02 平戸ザビエル記念教会
fukui_01ph01(写真)平戸のシンボルである「平戸ザビエル記念教会」と協会に祝福を与えるザビエル像。

平戸湾を見下ろす高台に建つ「平戸ザビエル記念教会」は当時のキリスト教信仰を今に伝える貴重な聖堂だ。日本にキリスト教を伝えたフランシスコ・ザビエルが初めて平戸の地を訪れたのは1550年のこと。その功績を讃えて1931年に現在の場所に建設され、1971年には「ザビエル記念像」が建立されて「聖フランシスコ・ザビエル記念聖堂」と改名。近年「平戸ザビエル記念教会」と改められた。正面左側にのみ八角堂がある左右非対称のゴシック様式の教会は今も信仰深い地元の人々に愛され、日常的にミサが行われている。




03 松浦史料博物館

一方平戸港近くの高台にあるのが「松浦史料博物館」だ。これは鎌倉時代から続いた平戸藩主松浦(まつら)家私邸として1893年に建てられた「鶴ヶ峯邸」を改装したもので、西洋交易で栄えた平戸藩と松浦家に伝わる貴重な史料が展示されている。中でも江戸時代後期の藩主松浦静山のコレクションは特別で、静山は平戸城内に楽歳堂という博物館を設置したことでも知られている。また、松浦家は武家茶道「鎮信流」宗家であり、いまも当主が代々鎮信流宗家としての伝統を守っている。敷地内にある「閑雲亭」では来館者ならいつでも「鎮信流」茶道を体験できるので、かの地を訪れたなら一度試してみてはいかがだろう。

fukui_01ph01(写真)閑雲亭では、松浦家が所有していた茶道具を使った鎮信流のお茶がいただける。

04 三川内美術館

現在は佐世保市に位置する三川内地区は旧平戸藩御用達窯として発展し、松浦家のための器や献上品を作る焼き物の里として発展して来た。その起源は豊臣秀吉の朝鮮出兵の際に朝鮮から投稿を連れ帰ったことに始まるので、すでに400年以上の歴史を誇る。その特徴は白磁に藍色の美しく上品な表情。三川内の里は陶磁器に欠かせない陶石や薪の原料となる森、水を供給する川と豊かな自然に囲まれている。また透し彫りなどの独自の技法が特徴的で、国の伝統工芸としても内外にその名が知られている。現在も16の窯元が伝統を守りつつ現代に馴染む焼き物を作り続けており、長崎を訪れた際には窯元を訪ね、お気に入りの一品を探す焼き物の旅もいいだろう。

fukui_01ph01(写真)館内に展示されているのは松浦家が贈答用に作らせた茶碗や大皿が並ぶ。

information


fukui_01info平戸オランダ商館

所在地:長崎県平戸市大久保町2477
Tel:0950-26-0636
開館時間:8:30~17:30
休館日:毎年6月第3火水木曜
入館料:大人 310円、小中高生210円

fukui_01info平戸ザビエル記念教会
所在地:長崎県平戸市鏡川町259-1
開館時間:9:00〜16:30(日曜10:00〜16:30)
休館日:なし
入場料:無料(献金箱あり)


fukui_01info松浦史料博物館
所在地 長崎県平戸市鏡川町12
Tel:0950-22-2236
営業時間:8:30〜17:30
休館日:12月29日〜1月1日
入館料:大人600円、小中高生350円
呈茶料:大人600円、高校生以下500円


fukui_01info三川内焼美術館
所在地:佐世保市三川内本町343
Tel:0956-30-8080
営業時間:9:00〜17:00
休館日:12月29日~1月3日
入館料:無料





日本100名城「平戸城」が大規模改修でリニューアル。sen
長く平戸藩のシンボルとして平戸市を見守り続けて来たのが平戸城だ。1718年第31代松浦家当主篤信の治世に完成した平戸城は、明治時代の廃城令で廃城となったものの1962年に天守閣が復元され、現在では日本100名城の一つに数えられている。
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その後平成の大規模改修を終えた城内には、現在「歴史体験アミュージアム」(アミューズメント+ミュージアム)という体験型のミュージアムスペースが常設されている。また、2021年4月には日本100名城で初めての宿泊施設を持つ城郭ホテルがオープン。場内にある懐柔櫓が「平戸城 CASTLE STAY 懐柔櫓」として1日1組限定、広さ約120平米の1棟まるごと占有できるエクスクルーシブな宿泊施設として生まれ変わったのだ。

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1階部分はダイニングスペースと畳敷きのリビングで、平戸の海の幸をふんだんに使った創作料理のフルコースがインルームで味わえる。インフィニティプールのようなバスルームからも、2階にあるベッドルームからも平戸湾が眺められると共に、宿泊客は天守閣でアペリティフタイムが楽しめる。平戸湾や平戸大橋を一望できる素晴らしい眺望の元に味わう美酒、気分はまさに平戸城主だ。

information


fukui_01info平戸城

所在地:長崎県平戸市岩の上町1458-1
Tel 095-022-2201
開館時間:8:30~18:00(4月1日〜9月30日)、8:30〜17:00(10月1日〜3月30日) 休館日:12月30日、31日
入館料:大人520円、高校生310円、小中学生200円
「平戸城 CASTLE STAY 懐柔櫓」1泊1部屋 600,000円


日本最西端の酒蔵で、今も受け継がれる平戸藩の御用酒
sen平戸市中心部から南西約30km、平戸島の先端部分にあるのが1688年創業の福田酒造だ。平戸藩御用酒屋として創業し、現在で14代続く老舗酒蔵。創業当時から日本酒と焼酎、両方製造しているのも九州ならでは。
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今も現存する当時の酒蔵を使って酒造りをしており、蔵の一部では伝統的な酒作りの道具などが博物館として保存、展示されている。県内の山田錦100%を使った「長崎美人大吟醸」や現代風ニュアンスを取り入れた「福鶴特別純米活性うすにごり」はいずれも清廉かつ秀逸。焼酎ならば長崎県産のジャガイモを使った「じゃがたらお春」もいいが素晴らしいのは大麦焼酎を樫樽で熟成させた「かぴたん」。特に年間2万本限定生産の「かぴたん10年」は上質のウイスキーを思わせる琥珀色の銘醸酒。平戸を訪れた際には是非福田酒造の酒を味わってみてほしい。
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information


fukui_01info福田酒造

所在地:長崎県平戸市志々伎町1475番地
Tel:0950-27-1111
開館時間:9:00~16:30
定休日:日曜

>>長崎ロマンを巡る旅へ|長崎ローカルガストロノミー 五島列島、大村、長崎編

text by Masakatsu Ikeda
取材協力:長崎県、平戸市、(社)平戸観光協会、佐世保市、(公財)佐世保観光コンベンション協会