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先日既にお知らせした通り、開業一周年を迎えた「ウェスティンホテル横浜」はさまざまなイベントを行っているが、そのハイライトとなったのがメイン・ダイニング「アイアン・ベイ」で6月9日から18日まで行われた「シンプリー・スカンジナビアンat ウェスティンホテル横浜」だ。

これは現在世界的に注目されるガストロノミー・デスティネーション、スウェーデンからミシュランスターシェフ、ジョン・サヤン・イサクソン氏を招聘して開催され、3月に新たに総料理長に就任した山下正太氏がホストシェフとなったコラボレーションイベントだ。

夏が旬、デザートにも料理にも、ニュージーランド産りんご「JAZZ™」

夕暮れ迫る「アイアン・ベイ」からは横浜の夕景が一望の元に見渡せる。ハイバックのコーナーソファに背中を預けながらそんな夕景を眺めていると、ほどなく美しい料理が運ばれてきた。
westinyokohama2306_01westinyokohama2306_01アミューズ:クロロフィル、緑茶、漬物 クリスピーな菊芋、甘海老 初夏の茶碗蒸し

最初のアミューズは発酵トマトと柑橘を小枝にさしたフィンガーフードと緑茶ベースの冷たいスープを交互にいただく「クロロフィル、緑茶、漬物」。爽やかな酸味は食事の幕開けにふさわしい。「クリスピーな菊芋、甘海老」は極薄の揚げ生地に新鮮な甘エビを詰めた春巻き風のひとさら。さくさくの食感と甘い海老は好相性。その美しさに思わずため息が漏れたのは「初夏の茶碗蒸し」だ。これは冷たいアスパラガスのフランに薄切りにしたアスパラガスを飾り、極上のウニと共にいただく料理。和風とは一味違う洋風の冷たい茶碗蒸しをいただいていると、蒸し暑い梅雨をしばし忘れたような気分になる。

純白でまとめた「熟成鰤、白ポン酢、山葵、大根」は新鮮な鰤と山葵、大根という日本の刺身を思わせる組み合わせだけれども、やはりそこはトップシェフの料理。白ポン酢のほのかな酸味とアジア的な絡みがほんのりと隠されていた。
westinyokohama2306_01westinyokohama2306_01(上)前菜:熟成鰤 白ポン酢、山葵、大根 (下)スープ:ビーフ出汁”コンソメ”、牛アキレス腱、夏の柑橘

一方「ビーフ出汁コンソメ、牛アキレス腱、夏の柑橘」は、少量だけど極上のコンソメに柑橘の香りが実によくあう。

イサクソン氏が「どうしても使いたかった日本の食材」として選んだ金目鯛を使った料理。「金目鯛の串焼き、白味噌、アスパラガス」は焼き目も美しい肉厚の金目鯛に、薄切りにすると独活のような白アスパラガスの歯触りが心地よい。
westinyokohama2306_01魚料理: 金目鯛の串焼き、白味噌、アスパラガス

メインの肉料理は国産牛を竹炭を使ったパン生地で包んで焼き上げた赤と黒のコントラストが見目麗しい一品。デザートの「燻製ハチミツ、グリルとフローズンの桃」はややスモーキーなアイスクリームが印象的だった。

westinyokohama2306_01メイン:国産牛、穴子、黒トリュフ
westinyokohama2306_01(上)デザート:燻製ハチミツ、グリルとフローズンの桃

アジアにルーツを持つというイサクソン氏は北欧ガストロノミーとアジアの香りや調理法をうまくミックスしたオリジナリティあふれる料理が素晴らしい。一方ホストシェフを務めた山下氏も才気とホスピタリティにあふれており、イサクソン氏と2人でゲストテーブルを回る姿がとても輝いていた。「ウェスティンホテル横浜」では今後も来日シェフはじめ、さまざまなガストロノミーイベントが控えているというから注目だ。港町横浜に、美食という新たな魅力を携えた最新ホテルの動向から、しばらくは目が離せそうにない。

text & photo by Masakatsu Ikeda

restaurant information


aman-tokyo-arva-interior アイアン・ベイ(ウェスティンホテル横浜)

住所:横浜市西区みなとみらい4丁目2-8 23階
Tel:045-577-0888
e-mail:restaurants.yokohama@westin.com
営業時間:17:30~22:00(L.O. 21:30)
定休日:毎週月曜、火曜
https://ironbay.westinyokohama.com/


profile


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池田匡克
ジャーナリスト/イタリア国立ジャーナリスト協会会員

1967年東京生まれ。1998年よりイタリア、フィレンツェ在住。イタリア料理文化に造詣が深く、イタリア語を駆使してシェフ・インタビュー、料理撮影、執筆活動を行う。著書に『伝説のイタリアン、ガルガのクチーナ・エスプレッサ』『シチリア美食の王国へ』『イタリアの老舗料理店』『世界一のレストラン オステリア・フランチェスカーナ』など多数。2014年イタリアで行われた国際料理コンテスト「ジロトンノ」「クスクス・フェスタ」などに唯一の日本人審査員として参加。2017年イタリア料理文化の普及に貢献したジャーナリストに贈られる「レポーター・デル・グスト」受賞。2023年「ITALIAN WEEK 100」のディレクターに就任。