手つかずの雄大な大自然を抱えるニュージーランドは、豊穣な土壌と安定した気候に恵まれた農業大国であり、その大地の恵みが育む豊かな食材は、ラム肉をはじめ、キウイ、チーズ、そしてワインなど世界中で愛されているものばかり。ニュージーランド産の食材の中でも、6月から8月にかけて最も美味しい季節を迎えているのが、北島のホースクベイの美しい果樹園で栽培されている夏りんご「JAZZ™」だ。

夏が旬、デザートにも料理にも、ニュージーランド産りんご「JAZZ™りんご」

jazz01「JAZZ™りんご」が日本に初めて輸入されたのは2011年6月28日のことで、これを記念して6月28日は「JAZZ™りんごの日」になっている。サクッとした食感とスッキリとした甘さが大きな特長で、独特の風味とバランスのとれた味わいは、デザートだけでなく料理にも最適で、焼いても形がくずれない。

環境配慮への意識が高いニュージーランドでは、政府が主導してサステイナブルな農業を推進しており、りんご栽培に関してもIT技術を駆使して、害虫や病気を検知することで農薬の散布量を抑え、温室効果ガス排出量の削減を目指したり、スキャン技術によって傷や傷みのあるりんごはジュース加工用にするなどしてフードロスにも取り組んでいる。日本では国産りんごのオフシーズンには5月あたりからニュージーランド産りんごが巷に出回っているが、ワックスコーティングされていないため自然な味わいのりんごを皮ごと楽しめるのもうれしい。

今回、そんなJAZZ™りんごの美味しさを余すところなく味わえる「JAZZ™りんごづくしのフルコースディナー」のメディアテイスティングが開かれた。料理を手掛けたのは、ミシュラン2ツ星レストラン 「ピエール・ガニェール・ア・東京」の料理長を務めた入江誠シェフだ。早速その模様をレポートしよう。

入江シェフのNZ産りんご「JAZZ™りんご」づくしのフルコースディナー

この日会場となったのは西麻布NO CODE内の「ÉPICOUL エピクル」だ。カウンター形式、8名限定のスペシャルディナーは「JAZZ™りんごって酸味や甘味のバランスがとてもよくてジューシー、今日はさまざまな形で料理に使います。」という入江シェフの軽快な挨拶とともに始まった。

まず最初に登場したのは「イカとリンゴのカクテル グリーンカレー」。イカとリンゴという大胆な組み合わせにスパイシーなグリーンカレー、しかしこれが実によくあう。ねっとりとしたイカの食感にJAZZ™りんごのクリスピーな歯ごたえが心地よく、グリーンカレーがほどよいアクセントとなっている。 jazz4(写真)左:「JAZZ™りんご」についての説明とともに挨拶をする入江誠シェフ。 右:「イカとリンゴのカクテル グリーンカレー」。

「イワシ 赤玉葱 アメリカンチェリー スマック」にはJAZZ™りんごは使っていないが、新鮮で肉厚のイワシのマリネに、食感を残した赤玉葱とアメリカンチェリーの甘味の穏やかなハーモニー。次に登場したのは羊肉を使った揚げ春巻き「羊 発酵にんじんとリンゴのラペ クミン デュカ」だ。クミンを効かせた中近東の羊のあげ春巻きもさることながら、発酵ニンジンとリンゴのジュリエンヌを中東のスパイス、デュカであえたつけあわせが、爽やかでまた心地よい。いまさまざまなスパイスに凝っているという入江シェフの自慢の一皿だ。
jazz4(写真)「イワシ 赤玉葱 アメリカンチェリー スマック」。jazz4(写真)「羊 発酵にんじんとリンゴのラペ クミン デュカ」。

米料理「パルメザンチーズのリゾット リンゴの熟成ビネガー」にはJAZZ™りんごをビネガーに浸けて熟成させ、ほのかな酸味がリゾットの味を引き締めてくれる。「イサキ グルノーブル風 コリアンダー」にもJAZZ™りんごは使われていないが、皮目をカリっとソテーしたイサキにカリカリのクルトンとレモン、ケッパーで作るグルノーブルは実にさっぱり。
jazz4(写真)「パルメザンチーズのリゾット リンゴの熟成ビネガー」。jazz4(写真)「イサキ グルノーブル風 コリアンダー」。

「霧島豚 発酵リンゴ リンゴと根セロリのレムラード」。これは入店直後に焼き始め、1時間以上かけてじっくりと火を入れた霧島豚の肩ロースにJAZZ™りんごとセロリアックにマスタード、ピクルス、ハーブなどを加えたレムラードの付け合わせ。「レムラードとはフランスの食料品店ならどこにでも売っている、とてもポピュラーなお惣菜です。」と入江シェフ。JAZZ™りんごの魅力を硬軟取り混ぜた斬新な料理が次々に登場し、ゲストを楽しませてくれるホスピタリティがまた実に心地よい。jazz4(写真)「霧島豚 発酵リンゴ リンゴと根セロリのレムラード」。

最後に登場したのはなんとJAZZ™りんごを使ったカレーライス、「ÉPICOUL咖喱 イリエマサラ」でガラムマサラの代わりに入江シェフ自らがスパイスを配合したオリジナルの「イリエマサラ」がとても香り高い。さらりとしたカレールーはJAZZ™りんご本来が持つ自然な甘さを引き出しており、カレーとのコントラストには脱帽。「こうやって食べるともっと美味しいんですよ。」と入江シェフが勧めてくれたのはカレーに少量のスコッチウイスキーを垂らして食べる方法。これがまた絶品で、お代わりするゲストも続出。最後の最後までサプライズの演出があるのが入江シェフならではのおもてなしなのだろう。「これは完璧です。」と入江シェフが最後に出してくれたのが「リンゴのテリーヌ シナモンアイスクリーム」。JAZZ™りんごの皮から抽出した自然な赤みがとても美しく、シナモンのアイスクリームとの相性は完璧。さまざまな形でJAZZ™りんごを味わいつくす珠玉のひと時だった。
jazz4(写真)「ÉPICOUL咖喱 イリエマサラ」。jazz4(写真)「リンゴのテリーヌ シナモンアイスクリーム」。

日本では5月から8月にかけて販売されるJAZZ™りんごは、これから暑くなる時期にぴったりの食材。一切れ口に含むだけで涼感を覚える、そんな愛すべきリンゴだ。その美味しさのあまり、引くてあまたでスーパーや食料品店では品薄のこともあるというが、その味は折り紙付き。入江シェフの料理を参考に自宅でいろいろな組み合わせを楽しむのもいいし、もちろんそのままいただくのは最高の食べ方。リンゴという食材の無限の可能性を堪能させてくれた入江シェフにはあらためてお礼を申し上げたい。

text & photo by Masakatsu Ikeda

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池田匡克
ジャーナリスト/イタリア国立ジャーナリスト協会会員

1967年東京生まれ。1998年よりイタリア、フィレンツェ在住。イタリア料理文化に造詣が深く、イタリア語を駆使してシェフ・インタビュー、料理撮影、執筆活動を行う。著書に『伝説のイタリアン、ガルガのクチーナ・エスプレッサ』『シチリア美食の王国へ』『イタリアの老舗料理店』『世界一のレストラン オステリア・フランチェスカーナ』など多数。2014年イタリアで行われた国際料理コンテスト「ジロトンノ」「クスクス・フェスタ」などに唯一の日本人審査員として参加。2017年イタリア料理文化の普及に貢献したジャーナリストに贈られる「レポーター・デル・グスト」受賞。2023年「ITALIAN WEEK 100」のディレクターに就任。
■JAZZ™りんごの公式HP:https://jazzapple.com/jp
■JAZZ™りんごの公式インスグラム:https://www.instagram.com