去る2023年10月5日(木)、7日(土)の2日間、銀座「アルマーニ / リストランテ」がシンガポールから星付きシェフを招聘してのスペシャルディナー・イベントが開催された。ホスト役となったのは「アルマーニ / リストランテ」エグゼクティブシェフ、カルミネ・アマランテ。 ナポリ生まれ、日本滞在歴も長くなったカルミネ氏は近年海外からのゲストシェフとのコラボレーションに積極的に取り組み、今年4月にはスペインから予約困難店として知られる「エニグマ」アルベルト・アドリア氏を日本に招聘。NOBUミラノのエグゼクティブシェフ兼本国ミラノ本社のコーポレートシェフのアントニオ・ダンジェロ氏もかけつけて、世界レベルで活躍する3シェフによる「アルマーニ・レストランツ・インシエメ」が大成功に終わったことはまだ記憶に新しい。

今回カルミネ氏と共演するゲストシェフは、シンガポールを代表するラグジュアリーホテル「スイスホテル ザ スタンフォード」のブリティッシュ・ダイニング「JAAN by Kirk Westaway(ジャーン by カーク・ウエスタウェイ」をミシュラン2ツ星にまで引き上げたカーク・ウエスタウェイ氏。イギリス生まれのウエスタウェイ氏は今回が初来日。伝統的なイギリス料理をガストロノミーレベルで世界に発信するウエスタウェイ氏が、日本でどんな料理をカルミネ氏と創り出すのか、注目のスペシャルディナーの詳細をレポートしたい。

まず食前酒の「フランチャコルタ・カ・デル・ボスコ・キュベ・プレステージュ」とともに登場したのがウエスタウェイ氏とカルミネ氏の合作となるさまざまなアミューズブーシュ。まずはカルミネ氏特製の冷たいフィンガーフード「ブリオッシュ 雲丹」から始まり、ウエスタウェイ氏によるアミューズブーシュ「ガチョウムース」「BBQ タラバガニ」「チェダーチーズ パンケーキ」へと続く。日本の食材を使って巧みにイタリアの味を創り出すカルミネ氏とは対照的に、ウエスタウェイ氏はタラバガニにはハリッサ、ブリオッシュの中身は温かいチェダーチーズと、日本の食材を東南アジアやイギリス的な趣向で楽しませてくれる。 armani01armani01(写真)上:カルミネ氏特製の冷たいフィンガーフード「ブリオッシュ 雲丹」、ウエスタウェイ氏の「ガチョウのムース」下:ウエスタウェイ氏による「トマトコレクション フレッシュバジルソルベ」

続く冷たい前菜はウエスタウェイ氏による「トマトコレクション フレッシュバジルソルベ」。これはウエスタウェイ氏のシグネチャーディッシュの一つであり、カルミネ氏が生まれたイタリアへのオマージュに満ちた一皿。さまざまなトマトとバジリコというイタリアを代表する食材に加えてオレンジジュースとポレンタで仕上げてあった。「帆立貝 キャビア サフランソース」はいまやカルミネ氏の代名詞になりつつある九州産のサフランを使った温かい料理。自然な甘みを感じるソースとソテーした帆立が好相性でキャビアの塩味がよいコントラストになっている。
armani01armani01armani01(写真)上段左:カルミネ氏の「帆立貝 キャビア サフランソース」上段右:ウエスタウェイ氏の「静岡 アカザエビ」中段左:カルミネ氏のシグネチャーディッシュ「リソディセモラ 黒トリュフ」中段右:カルミネ氏の「キンキ」下段:ウエスタウェイ氏の「ホロホロ鳥  玉ねぎマーマレード」

静岡産アカザエビを使ったウエスタウェイ氏の料理は、白菜の中にアカザエビを包んで蒸し煮にしてあり、クラシックな焦しバターのオランデーズソースでいただく。

続くカルミネ氏の料理も、いまやシグネチャーディッシュとなりつつある「リソディセモラ 黒トリュフ」これは米の形をしたカルミネ氏の故郷ナポリのパスタを使ったリゾット風のパスタ。一口ほおばれば官能的な黒トリュフの芳香があふれだす。キンキのグリルも柔らかく火を入れたカルミネ氏らしい料理。メインはウエスタウェイ氏による「ホロホロ鳥 玉ねぎマーマレード」で、これもどこか懐かしい優しい味わい。
faro01(写真)左:コースをしめくくる最後のデザートはウエスタウェイ氏の「みかん」右:秋山氏の「モンテビアンコ」

デザートはウエスタウェイ氏の「みかん」と「アルマーニ / リストランテ」のペストリーシェフ秋山真佐典氏の「モンテビアンコ」で栗をふんだんにつかったオリジナリティあふれる「モンブラン」だった。

ウエスタウェイ氏は『「アルマーニ / リストランテ」はアルマーニ ブランドのエレガンス、細部への究極のこだわりを「食」で見事に表現しています。カルミネ氏のクリーンで繊細な料理スタイルとプレゼンテーションや料理の美しさには以前から感心していました。そんなカルミネ氏と彼のレストランで一緒に料理ができる機会は逃したくないと思い今回のコラボレーションに至りました。』とコメント。一方ホスト役となったカルミネ氏は「カークシェフの料理哲学に共感し、彼が生み出す英国とアジアをフュージョンさせた料理や世界観はとても素晴らしいと感じています。「アルマーニ / リストランテ」にとって、そして自分自身やチームにとっても、第一線で活躍するカークシェフとのコラボレーションは刺激的な経験です。」と語ってくれた。

お互いにヨーロッパを母国としながらもアジアで活躍するトップシェフ同志として、互いに刺激を受けたのは確かなようだ。日本の食材を使ってお互いの母国料理をベースとしたファインダイニングとして提供する試みは画期的かつ、非常に意欲的。今後も面白いと思ったシェフとコラボレーションに取り組んでみたいというカルミネ氏の精力的な活動にはますます目が離せない。

text/photo by Masakatsu Ikeda

restaurant information


GA TOKYO GINZA TOWER (14)アルマーニ / リストランテ(東京)

住所:東京都中央区銀座5-5-4 アルマーニ / 銀座タワー 10階&11階
Tel:03-6274-7005
Lunch 11:30~15:00 (L.O.14:00) Dinner 18:00~23:00 (L.O.20:00)
定休日:月曜日 ※2024年2月以降~9月末まで日曜日も定休日となる。
profile


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池田匡克
ジャーナリスト/イタリア国立ジャーナリスト協会会員

1967年東京生まれ。1998年よりイタリア、フィレンツェ在住。イタリア料理文化に造詣が深く、イタリア語を駆使してシェフ・インタビュー、料理撮影、執筆活動を行う。著書に『伝説のイタリアン、ガルガのクチーナ・エスプレッサ』『シチリア美食の王国へ』『イタリアの老舗料理店』『世界一のレストラン オステリア・フランチェスカーナ』など多数。2014年イタリアで行われた国際料理コンテスト「ジロトンノ」「クスクス・フェスタ」などに唯一の日本人審査員として参加。2017年イタリア料理文化の普及に貢献したジャーナリストに贈られる「レポーター・デル・グスト」受賞。2023年、「ITALIAN WEEK 100」のディレクターに就任。