世界有数のエアライン、カタール航空と日本を代表するシェフ、成澤由浩氏による夢の機内食コラボが実現した。カタール航空は世界で10社しかない航空会社の最高峰、ファイブスター・エアラインに格付けされているのみならず「エアライン・オブ・ザ・イヤー」を7回受賞。最も素晴らしいビジネスクラスに与えられる「ワールド・ベスト・ビジネスクラス」を10回受賞している、世界で唯一のエアラインだ。

一方成澤由浩シェフは日本料理からキャリアをスタートしフランス、スイス、イタリア、ポルトガルなどヨーロッパ各国で8年間キャリアを積んだ後に帰国。現在は南青山にある「NARISAWA」オーナーシェフであり、日本の生態系を料理に表現した「里山キュイジーヌ」の旗手として活躍。国境という既成概念にとらわれないその料理は世界的に非常に評価が高い。その成澤シェフが2024年3月よりカタール航空ビジネスクラス「Qsuite」の機内食を担当するというのだから、世界的な話題となることは間違いないだろう。

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「NARISAWA」で行われた発表会はカタール航空のビジネスクラス「Qsuite」よろしく、まずはキャビンアテンダントからウェルカムドリンクとなるシャンパンのサービス。スタートに先立って行われた挨拶で成澤シェフは「カタール航空として、日本人シェフとコラボするのは初めての試みということで自分になにができるかということを考えてみました。自分が機内で食べたいと思う料理など、素晴らしい日本の食材をふんだんに散りばめて季節感を表現し、『NARISAWA』で通常出している料理に限りなく近いものにしようと考えています」と話してくれた。

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最初に登場した「アミューズブーシュ」(写真上左)は車海老とアオリイカという季節の魚介類、その下には柚子胡椒をきかせた胡麻ドレッシングで和えたジャガイモ、最後に柚子のジュースで酸味を加えてある。春の食材である白アスパラガス、緑アスパラガス、菜の花はいずれも成澤シェフが多用するマイクロ野菜。サステナビリティを重視しつつ、日本の食材を楽しんでもらいたいという成澤シェフからのメッセージ。

「祇園祭」(写真上右)は通常「NARISAWA」で出している料理のひとつだが、レストランでは温製なのに対しこちらは常温での提供。3種類の異なる方法で調理したナスを使ったベジタリアン対応の料理。見目麗しいエディブルフラワーを使い、京都の祇園祭に登場する絢爛豪華な鉾をイメージしてある。ここで日本酒の「満寿泉」の「プラチナ搾り」が登場。コクと旨味が特徴的な辛口の純米大吟醸で、通常は「NARISAWA」でしか飲めない貴重な酒なのだが、今後はカタール航空ビジネスクラス「Qsuite」でも味わえるというから楽しみだ。

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「やま幸 まぐろ」(写真上左)は豊洲「やま幸」の一番マグロをつかったちらし寿司。青森産のホンマグロの赤身の漬け、ウニ、甘みを強くした厚焼き卵、キュウリ、椎茸、キャビア。機内食なのでシャリは締まりすぎないように、生ウニも一工夫してあるという。機内で出てくるとは思えない驚くべきクオリティのちらし寿司で、甘みや酸味、さまざまな食感を楽しむ。

椀物はとても美しい冬の料理「手毬」(写真上右)。日本文化を料理で表現するという成澤シェフの想いが込められている。昔から子供の遊び道具として親しまれてきた手毬はほつれては直すという、物を大切にする日本文化の象徴。中身はホタテと車海老の真薯に昆布とかつおでとった一番出汁。ニンジン、カブ、サヤインゲンなどの野菜を細切りにし、手毬のように巻き付けてある。

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「伊勢海老 バニラ トマト」(写真上)これも「NARISAWA」のシグネチャーのひとつ。フランス料理の名作「オマールとバニラ」に着想を得て、これにトマトを加えて酸味をプラス。オマールではなく小田原産の伊勢海老を使用。クラシックなバニラソースにトマトの酸味と甘みが加わり、軽快かつ現代的な味わい。「こんな料理が機内で出たら嬉しいですよね」と成澤シェフ。

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メイン料理は「和牛サーロイン」(写真上左)出汁と醤油で作ったソースの中で牛肉に柔らかく火を入れてすき焼き風にしてある。付け合わせの野菜はローズマリーの香りの安納芋と紫サツマイモ、バニラの香りのビーツ、シナモンの香りのカボチャと異なる香りを楽しめるようにやっており、蕎麦の実とゴボウのリゾットもまた素晴らしく美味しい。機内だと米のアルデンテを保つのが難しいので日本らしい食材、蕎麦の実をセレクト。様々な宗教が混ざる中近東方面への旅はどうしても鶏や羊が多くなりがちだが、成澤シェフはハラル認証を取得している和牛を使用。カタールへのフライトではあるけれど、世界中からの乗客が登場するエアラインなので料理を自由に楽しんでもらいたい、というカタール航空のポリシーを反映し、自由に作らせてもらったと笑う。

最後のデザートは日本の喫茶店文化の象徴である「メロンクリームソーダ」(写真中央)。「NARISAWA」ではエスプーマを使うが、機内ではキャビンアテンダントがソーダ水をかけてその場でメロンソーダに仕上げる。静岡産の甘いメロンを使った最上級のメロンクリームソーダだ。

ちなみに今回の機内食は2024年3月から東京〜ドーハ間のフライトで提供開始。関西空港発〜ドーハ間のフライトも同時期に8年ぶりに復活するというから、カタールへの旅はより近く、快適になるはずだ。カタール航空と成澤シェフによるコラボメニューは「これが機内で食べられるとは」という驚きの連続で、通常なら「NARISAWA」でしか食べられないシグネチャーディッシュも何皿も登場。それはまさに空を飛ぶ高級レストランで「世界のNARISAWA」の料理目当てにカタール航空をチョイスする旅行者も今後はかなり増えるのではないかと想像する。

text & photo by Masakatsu Ikeda

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■カタール航空について
数々の受賞歴を誇るカタール航空は、国際的な航空輸送評価機関であるスカイトラックス社が実施している「ワールド・エアライン・アワード2023」にて、10度目となる「ワールド・ベスト・ビジネスクラス」を受賞。また、2023年に開催された「第54回パリ航空ショー」では、「中東ベスト・エアライン」、「世界最優秀ビジネスクラス・ラウンジ」、「世界最優秀ビジネスクラス・ラウンジ・ダイニング」などの栄えある賞も獲得し、航空業界において比類なき地位を確立している。これまでに、スカイトラックス社の「ワールド・ベスト・エアライン」を計7回(2011年、2012年、2015年、2017年、2019年、2021年、2022年)受賞。現在カタール航空は、2021年と2022年に連続してスカイトラックス社から「世界最優秀空港」に選ばれた、ドーハのハブ空港、ハマド国際空港を起点に、世界170都市以上に就航。今年、ハマド国際空港はスカイトラックス社から世界第2位の空港に選ばれ、また、9年連続で「中東ベストエアポート」の栄誉に輝いたほか、「世界のベストエアポートショッピング」にも選出されている。

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池田匡克
ジャーナリスト/イタリア国立ジャーナリスト協会会員

1967年東京生まれ。1998年よりイタリア、フィレンツェ在住。イタリア料理文化に造詣が深く、イタリア語を駆使してシェフ・インタビュー、料理撮影、執筆活動を行う。著書に『伝説のイタリアン、ガルガのクチーナ・エスプレッサ』『シチリア美食の王国へ』『イタリアの老舗料理店』『世界一のレストラン オステリア・フランチェスカーナ』など多数。2014年イタリアで行われた国際料理コンテスト「ジロトンノ」「クスクス・フェスタ」などに唯一の日本人審査員として参加。2017年イタリア料理文化の普及に貢献したジャーナリストに贈られる「レポーター・デル・グスト」受賞。