日本に本場ナポリピッツァを広めた功労者、サルヴァトーレ・クオモ氏の活動30周年を記念した華やかなパーティが渋谷「CÉ LA VI TOKYO」で2024年2月28日(水)開催された。

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イタリア出身のサルヴァトーレ氏は若干14才にしてナポリのレストランで働き始め、日本に活動の拠点を移すと1995年に中目黒に「サルヴァトーレ」をオープン。当時はまだ日本では珍しかったナポリ風本格ピッツァを出すピッツェリア・レストランとして大人気を集めたことを覚えている人も多いかもしれない。レストランのヒット後は多くのテレビ出演などを経てサルヴァトーレ氏の知名度は一気に全国レベルとなり、レストラン「サルヴァトーレ・クオモ」はを日本全国に展開。さらには上海や台湾、韓国、フィリピン、インドネシアとアジア全体で活躍する有名シェフとなったのだ。

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30周年記念パーティでは、ピッツァやワインが楽しめるパーティ会場の他に、VIPルームではサルヴァトーレ氏が自ら腕を振るった料理とシャンパーニュによるスペシャル・ペアリング・ディナーも開催された。ディナー開始前のスピーチでサルヴァトーレ氏は「これからのシェフはさまざまな意味で無理のないようにサステイナビリティを考えていかなければいけない。これまではお客様ファーストでしたが、これからはお客様同様スタッフの労働環境も考えたスタッフファーストがますます重要になる」と語ってくれた。

pullman_01Stuzzichino「Spelt Flour San Marzano Tomato Whitebait」×「Mint Julep All´ Italiana」

まずは一口サイズのミニピッツァのスターター。「これは北海道産のスペルト小麦を使いましたが、とても優秀な生産者の小麦です」とサルヴァトーレ氏。あわせるのはイタリアを代表するリキュール「ディサローノ」を使ったミントジュレップだ。

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Antipasto「Flounder Caviar Champagne」×「Ruinart Blanc de Blancs」
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Zuppa「Foie Gras Cacio e Pepe Minestrone」×「Veuve Clicquot La Grande Dame 2015」

前菜にはヒラメのカルパッチョにキャビアのトッピング。ここからは5種類のシャンパン・ペアリングが始まるのだがまずは「ルイナール・ブラン・ド・ブラン」穏やかな酸が白身魚によくあう。続いてフォワグラだが野菜を細かく刻んだスープ、ミネストローネに浮かべてあり、底にチーズ、黒胡椒をきかせたカチョ・エ・ペペのスタイルだ。「フォワグラだけどイタリアらしくミネストローネでスープ仕立てにしてみたよ」とサルヴァトーレ氏。シャンパンは変わって「ヴーヴ・クリコ・グランダム2015」ヴーヴ・クリコの中でも優良畑のブドウのブレンドで、気品ある味わいが素晴らしい。

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pasta「Spaghetti Scampi Fagioli Beans」×「Moët et Chandon Rosé Impéria」
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Pesce「Tile Fish Ikura oil Bottarga」×「Dom Pérignon Vintage 2013」

ナポリ出身のサルヴァトーレ氏の料理ではピッツァと並んでパスタは外せない。ナポリ近郊、ベネヴェントにある老舗パスタメーカー「ルンモ」のスパゲッティはアカザエビと白インゲン豆でコクのある味付け。これにあわせるのは華やかな桜色の「モエ・エ・シャンドン・ロゼ・アンペリアル」。花を思わせるアロマは、ようやく冬があけ、生命力に溢れた春を連想させる。魚料理は甘鯛のウロコ焼きにイタリアのカラスミ、ボッタルガとイクラオイル。ここで真打登場「ドンペリニョン2013」。きめ細やかな泡とクリーミーな舌触りは極上のひとこと。

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Carne「Wagtu Chateaubriand Amarone wine」×「Krug Grande Cuvée 170ème Édition」

そしてメインは和牛のシャトーブリアン。19世紀フランスの美食家の名にちなんだ最上級のフィレ肉だ。濃厚なイタリアの赤ワイン、アマローネを使ったソースが絶妙のハーモニー。締めのワインは赤ワインではなくもちろんシャンパン。「クリュッグ・グランド・キュヴェ170エディション」。シャンパンの帝王と呼ばれる「クリュッグ」が誇る究極のシャンパンのひとつ。果実はもちろん、ナッツやバター、ハチミツといったさまざまなニュアンスが広がり、和牛の上品な脂が瞬く間に口中で消えてゆき、また一口飲みたくなる。最後のデザートは豆乳を使ったジェラートにたっぷりの黒トリュフ。甘口のデザートワインの代わりにディサローノ・オン・ザ・ロックで締める。

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この日の主役であり、ホストとして総料理長も努めたサルヴァトーレ氏は食事の合間にVIP席を回ってゲストをもてなし、楽しませてくれる。近年はインドネシアにあるレストラン「カーサ・クオモ」はじめ大分県に設立した食材研究ラボ「LAB3860」そして日本全国のみならずアジア全域に展開するピッツェリア「サルヴァトーレ・クオモ」を忙しく飛び回るサルヴァトーレ氏。しかも現在はパリに住居があるというからその活動はアジアを飛び越えてワールドワイドに展開している。ナポリ・ピッツァのパイオニアとして来日したサルヴァトーレ氏は30年の活動を経て今や日本の食材をイタリア料理と融合させ、世界に広める料理大使のような存在となっている。「自分が仕事できるのはせいぜいあと十年ぐらいかな。とはいえ十年後も同じこと言ってるような気もします」と笑うサルヴァトーレ氏。十年とはいわずまだまだずっと現役で、わたしたちの舌と心を楽しませてほしいと願わずにいられない。

text by Masakatsu Ikeda

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池田匡克
ジャーナリスト/イタリア国立ジャーナリスト協会会員

1967年東京生まれ。1998年よりイタリア、フィレンツェ在住。イタリア料理文化に造詣が深く、イタリア語を駆使してシェフ・インタビュー、料理撮影、執筆活動を行う。著書に『伝説のイタリアン、ガルガのクチーナ・エスプレッサ』『シチリア美食の王国へ』『イタリアの老舗料理店』『世界一のレストラン オステリア・フランチェスカーナ』など多数。2014年イタリアで行われた国際料理コンテスト「ジロトンノ」「クスクス・フェスタ」などに唯一の日本人審査員として参加。2017年イタリア料理文化の普及に貢献したジャーナリストに贈られる「レポーター・デル・グスト」受賞。2023年、日本全国の北海道から沖縄まで100店の高級イタリア料理店が参加する大型レストランイベント「ITALIAN WEEK 100」のディレクターに就任。