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「日本のひなた」と言われる温暖な気候の宮崎県は、さまざまな農畜産物の宝庫。日本にブランド牛は数あれど、ここ数年、特に注目を浴びているのが宮崎牛だ。そして宮崎にはもう一つ、焼酎の生産量9年連続全国一位の焼酎王国としての顔もある。今回、「”日本のひなた”MIYAZAKI ガストロノミックツアー」と題して宮崎県の美味しいモノ巡り前編では「宮崎牛」を、後編で「焼酎の酒蔵巡り」をご紹介!



食通も垂涎のキング・オブ・黒毛和牛「宮崎牛」

宮崎県の和牛の飼養頭数は北海道、鹿児島に次ぐ全国3位を誇り、その美味しさは名実ともに証明されている。5年に1度開催される全国和牛能力共進会(通称「和牛のオリンピック」)において4大会連続で最高賞である内閣総理大臣賞を受賞。米国アカデミー賞アフターパーティーでは6年連続で「宮崎牛」が提供されているなど、キング・オブ・黒毛和牛なのだ。そもそも「宮崎牛」を名乗ることができるのは、宮崎県で出生かつ肥育され、指定された種雄牛を父にもち、かつ肉質等級が4等級以上と認められた牛のみに限られるのだ。
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2023年4月に開業した道の駅「都城NiQLL(ニクル)」(写真上)を訪れてみると、改めて同県の食の豊かさを実感した。同店に出向いたのは折しも29日。「肉の日」である。宮崎牛が2割引で販売されていて、何パックもの肉を抱えている人を多く見かけた。
miyazaki2402_2 さて早速、訪れたのは宮崎県都城市の最高ランクA5等級の宮崎牛を一頭買いしている、都城の焼肉店「焼肉みひろ広原店」だ。さまざまな部位の肉を少しずついただき、宮崎牛の特長である、きめ細かなサシを味わう。リブ芯のサシと赤身のコントラストはもはやアート。口に運ぶと上質な脂をたたえた肉汁の和牛香が鼻孔を刺激した。肩から前足上部にあたるクリミは、やわらかく濃厚な味わいが良い。タレや塩を付けなくても美味しくいただける。噛めば噛むほど旨みが高まっていく。焼肉はもちろんだが、「宮崎牛ハンバーグ」も肉々しくジューシーで絶品だった。

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都城NiQLL
住所/宮崎県都城市都北町5225- 1

焼肉みひろ広原店
住所/宮崎県都城市広原町10-8-1


宮崎牛の未来を支える、都城市の繁殖農家へ
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ランチの後は都城市の繁殖農家「飯盛農場」を訪問した。牛の畜産農家は、大きく子牛を育てる「繁殖農家」と子牛を肉牛として育てる「肥育農家」に二分される。一般的に人工授精によって性を受けた子牛が繁殖農家で10か月ほどを過ごす。その後、セリにかけられ、肥育農家で20か月ほど肥育されるのだが、子牛セリで県外へと旅立つ子牛も数多くいる。令和3年度のデータによると32.7パーセントの子牛は三重県、佐賀県、兵庫県など県外へと出荷される。つまり、近江牛や佐賀牛などの一部は、宮崎で生産された子牛、なのである。ちなみにこの日、飯盛農場で出会った子牛は厳密には宮崎牛ではない。冒頭に触れたように、宮崎牛を名乗るには肉質等級が4等級以上である必要があるが、こればかりはと畜してみないとわからないからだ。

今回、立ち寄った飯盛農場では生後数か月の子牛を何頭も目にした。筆者らが牛舎に入っていくと、牛たちがざわつく。か、かわいい‼ 中にはまだ、母牛と一緒に過ごしている小さな子牛もいた。同牧場の長男の将太さんは、なかなか休みを取ることができない畜産農家の手伝いをする和牛定休型ヘルパーを派遣する会社(Moo Company)を立ち上げるなど、宮崎牛の未来を見据えた事業も積極的に取り組んでいる。そんな飯盛農場でも、父親がやっていた畜産農家を、配偶者と共に継ぐことを決めた、中原もえみさんが研修生として働いていた。

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飯盛農場
住所/宮崎県都城市高城町四家1653-13




アスリートにも人気、しゃぶしゃぶで食す宮崎牛
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夜は「トンカツ・しゃぶしゃぶミヤチク」で、しゃぶしゃぶを食べた。「ミヤチク」は食肉処理場も持つ、宮崎牛指定店だ。県内外に7店舗、東京に姉妹店が1店舗あり、焼肉、鉄板焼き、今回、立ち寄ったしゃぶしゃぶなど、さまざまな形態で宮崎牛を提供している。

宮崎牛のしゃぶしゃぶは、赤身とロースの2種を用意。スープは、昆布の和風だしと濃厚地鶏塩だしの2種類が付く。赤身は、自然に恵まれた宮崎の大地で大切に育てられたことが容易に想像でき複雑で力強い旨みをたたえていた。きめ細かなサシが入ったロースは口のなかに入れた瞬間にふわりととろけた。それでいて、しっかりと旨みも感じられる。「ミヤクチ」の宮崎牛はアスリートにも人気と聞く。なお、店名のとおり、同店では、安全・安心の基準をクリアした生産者のみが育てた豚肉が認定される「宮崎ブランドポーク」を使ったトンカツも楽しめる。機会があれば、こちらもいただいてみたい。

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トンカツ・しゃぶしゃぶ ミヤチク
住所/宮崎市昭栄町173-5

【参照】宮崎牛の生産現場から食肉処理を経て、消費者に至るまで。「おいしさ日本一宮崎牛」PR動画


”後編 日本のひなた”MIYAZAKI ガストロノミックツアー 焼酎編へ
Text by Aya Hasegawa