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日本各地の豊かな自然やその土地固有の多様な文化や伝統に触れれば、大人の知的好奇心を満たす旅があなたを待っている。2024年におすすめしたい日本旅は、都心では体験できない "特別で忘れられない極上時間" を楽しめる場所。そんなサイトスペシフィックなディスティネーションを厳選してお届けする。

青森県の十和田湖から流れる奥入瀬川の上流約14キロメートルに広がる奥入瀬渓流は、自然が長い年月をかけて作り上げた東北地方を代表する景勝地として人気のスポット。ここにはカツラやブナなどの樹木、約300種の苔や草花、カモシカやテンなどの多様な動植物が生息している。いくつもの滝や岩、流木がそのままの姿で残され、手つかずの自然が保全されている、国の特別保護地区、特別名勝に指定された天然記念物だ。渓流沿いには遊歩道が整備されており、新緑に囲まれた美しい清流や滝を間近に楽しみながら、老若男女誰でも気軽に散策できる。渓流のせせらぎ、草木のさわやかなざわめき、鳥のさえずりが響き渡り、深呼吸すればマイナスイオンがたっぷり体内に取り込まれ、心身ともにリフレッシュ!
fukui_01ph01(写真)渓流テラスから奥入瀬渓流の眺め。

大自然にひたすら浸る"渓流スローライフ"を満喫するsen

奥入瀬渓流沿いに唯一佇むリゾートホテルが、「星野リゾート 奥入瀬渓流ホテル」だ。"渓流スローライフ"をコンセプトに、客室、温泉、食事、アクティビティなどで、四季を通じて季節ごとの美しい自然を満喫できる過ごし方を用意している。このホテルを訪れたなら、まず第一に体験して欲しいのは、瀬音を聞きながらの特等席で爽やかな朝時間を過ごせる期間限定(5月~10月)の朝食「渓流テラス」だ。澄んだ空気と美しい自然の中で、五感を目覚めさせる朝食を堪能する、そんな極上の朝から始まる一日は、この上ない贅沢というより他ない。
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(写真)上:渓流テラスで食べる朝食。スペシャリテのスモーブローのほか、りんごのマリネ、ホタテ貝のクラムチャウダー、キッシュ、ヨーグルト、ジャムが、りんごの収穫に使う木箱に見立てたボックスに詰めて提供される。※時期により、提供内容、食材の産地が異なる場合がある。 下:朝の渓流テラスは、新緑に包まれた清々しい空気に包まれている。

広々とした館内には、ゆっくりくつろげるパブリックスペースも充実。ホテルに入ってすぐ正面、東館のロビー 森の神話には、窓の外の渓流の木々を背景に岡本太郎が制作したブロンズ製の大暖炉(写真トップ)が設置されている。奥入瀬渓流に生息する鳥やきのこ、森が共生している様子を表現した作品だ。ラウンジでチェックインした後はここでウェルカムドリンクをいただける。もう一つのラウンジ「渓流‐BASE」は、雄大な国立公園の自然の不思議を感じさせるクリエイティブな雰囲気の空間となっていて、中央には同じく岡本太郎の遺作で、奥入瀬渓流の水しぶきが水の妖精「ニンフ」に変わっていく様子を表現した作品、大暖炉「河神」がある。どちらの作品もとても貴重で見応えがあり、奥入瀬渓流ならではの特別な空間を演出している。
fukui_01ph01(写真)「渓流‐BASE」の中央に設えられた大暖炉「河神」。

120平米の広さを有すラグジュアリー客室「渓流スイートルーム」sen
fukui_01ph01(写真)ダイニングテーブルは、けやきと青いレジンを用いて渓流の流れをイメージしたデザイン。

2022年12月に誕生した「渓流スイートルーム」は、「渓流と過ごす、ごぼうび。」をテーマに、渓流を見下ろす絶好のロケーションにあるラグジュアリーな客室だ。120平米の広さに、2つの寝室とダイニングキッチン、渓流の景色を望める客室温泉とコンサバトリー(自然に張り出した空間で日の光を浴びながら自然を楽しむスペース)そして、温泉付きという至れり尽くせりな仕様だ。インテリアには、本物の苔を用いた壁画やけやきのダイニングテーブルなど、渓流をイメージしたこだわりのデザインが随所に取り込まれていて、ゆっくりくつろぎながら朝から晩まで渓流の景色を独り占めすることができる。
fukui_01ph01(写真)客室温泉の窓からは奥入瀬渓流の新緑の眺め、絶えず清流の瀬音が聞こえる。窓を全開にすれば半露天風呂となる。

温泉は、八甲田山中から湧き出る猿倉温泉混合泉の良質な湯を堪能できる。客室の温泉横に併設されているコンサバトリーでは、フレンチレストラン「Sonore」(ソノール)のみで提供している約150種類の銘醸ワインを客室で特別に味わうことができる特権付きだ。また館内には「渓流露天風呂」、滝が間近に迫る貸切露天風呂「八重九重(やえここのえ)の湯」、それに奥入瀬渓流の冬の風物詩「氷瀑」を再現した「氷瀑の湯」も冬限定で登場する。部屋でこじんまりくつろぐのも良し、露天風呂で渓流の清らかな風を感じながら温泉を楽しむのも良し、思い思いの湯浴みを楽しんで。

朝から晩まで苔三昧!
苔づくしの宿泊プラン「おいらせ苔旅」 期間:2024年6月20日~8月31日


奥入瀬渓流は日本でも「苔の聖地」として名高く、2013年には「日本の貴重なコケの森」に認定されているのをご存じだろうか。日本に約1800種類存在する苔のうち、300種類以上がこの地に生息しており、その豊かな生態系が訪れる人々を魅了してやまない。
fukui_01ph01(写真)左:「苔スイートルーム」 中央:テラリウムアフタヌーンティー 右:「苔スイートルーム」の特別朝食。

「苔」にちなんで1日1組限定の「苔スイートルーム」は、至る所に苔を感じられるデザインを施した、非日常感あふれる贅沢な一室。こちらの部屋での滞在プランとして、2024年6月20日~8月31日までの期間に新たに登場するのが、苔づくしの2泊3日の「おいらせ苔旅」だ。「苔スイートルーム」での滞在のほか、苔の魅力を知り尽くすアクティビティや本物の苔を観察している気分を楽しめる苔モーニング、テラリウムをイメージした可愛らしいデザインのアフタヌーンティーなどがセットになっており、まさに苔づくしのユニークな体験ができること間違いなし。

絶景アペリティフから始なる、この地ならではの美食体験senfukui_01ph01(写真)奥入瀬渓流の自然をイメージしたデザインのメインダイニング、フレンチレストラン「Sonore」。

2019年7月にグランドオープンしたフレンチレストラン「Sonore」は、奥入瀬渓流を眼前に望みながら、地元青森の旬の食材を駆使したフランス料理と、ワインセラーに眠る約150種類2000本以上の希少価値の高い銘醸ワインを堪能できるフレンチレストランだ。料理長の簑原諒(みのはら・りょう)氏は、2018年に「星のや 竹富島」を経て、2019年3月から「星野リゾート 奥入瀬渓流ホテル」のフレンチレストラン「Sonore」開業に携わった。青森県内の生産者を自らの足で訪れ、現地の魅力的な食材の開拓に余念がなく、青森の食文化を伝えるべく研鑽を続けているシェフだ。

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(写真)渓流テラスでシェフこだわりのアミューズとシャンパーニュを味わうアペリティフ。


とっておきの食事のスタートは、奥入瀬渓流を望むテラス席でのアペリティフから。清廉な渓流の空気に包まれながら、シェフこだわりのアミューズ5品をシャンパーニュのマリアージュとともに味わう。これはこのホテルならではというよりほかない至福の体験だ。渓流の景色を借景にして登場した美しいアミューズは、土地のものや旬のものをふんだんに取り入れた見目麗しいラインナップ。シェリー酒で漬け込んだイカの切り込み、豊盃の酒かすを使ったグジェール、青森県特産の馬肉にスパイスとマスタードのアクセントを添えた馬筋ドッグなど、一品一品丁寧に仕立てられたフィンガーフードとシャンパーニュは相性抜群。

アペリティフの後は、店内に移動してコース料理の本格的なスタートだ。冷前菜「鮪」は、4年間熟成させた魚醤を使用したタルタルと春が旬のキャベツを合わせた一品。キャベツはローストコンブのオイルをまとわせてソテーし、スパイスやナッツの香ばしい味わいが特徴のデュカと合わせた。間に鮪の出汁でマリネした卵黄を挟み、トップにはサクサクとした食感のクルトンやアマランサスのハーブを添えた。ペアリングはフランスとスイスの国境沿いで高品質なワイン産出地として著名なジュラ地方のピノ・ノワールを用意。赤い果実のアロマとナッツのニュアンスで柔らかく、滑らかなテクスチャーのミディアムボディが、鮪の旨味や滑らかな舌触りをより一層引き立てる。

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(写真)上:「鮪」と「コート デュ ジュラ ピノ ノワール」 下左から:「雲丹」、「かっけ」、「帆立貝」。

温野菜「かっけ」は、青森県南部で親しまれている郷土料理の一皿だ。蕎麦のかけらという意味から「かっけ」と名付けられた。この料理の発祥は、その昔、南部藩の殿様が大の蕎麦好きだったことから庶民に食べさせたくないと、蕎麦を食べることを禁止にしたために、庶民は蕎麦の端を味噌をつけて食べていたという伝承に由来するのだそう。下からフキノトウのパウダーを混ぜ合わせた蕎麦かっけ、その上にコシアブラやネマガリダケといった春の山菜をたっぷり使用し、山菜のほろ苦さに身体が喜ぶような春らしい味わいを楽しめる。ペアリングは新進気鋭のワイナリーで、ニュージーランドのヴァンダルゴンゾーのナチュールワインを合わせる。ワインの香りは発酵酒、黒ビールの麦芽に近いアロマで、澱とともに6カ月間熟成したことによる複雑味があるが、飲み口はソーヴィニョン・ブランらしい透き通った果実味を感じさせる。蕎麦の香ばしさや少しスモークがかった香りなど、繊細なこの料理の味わいとぴったりと寄り添う一杯だった。コース料理全体を通して、秀逸なワインセレクションによる料理とのマリアージュが素晴らしく、ぜひソムリエおすすめのペアリングを試してみて欲しい。

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(写真)左上から時計回りに:「牛」、「平目」、「苺」、「黒文字」。

この日の魚料理は、青森八戸の特産である平目を貝の出汁のべースにしたヴァンブランソースで合わせた一品。付け合わせは、北寄貝と地元の農園がつくる新玉ねぎのエチュベとピューレを合わせたガルニチュール。添えられた春菊のピューレのピュアな苦みがアクセントになっている。肉料理「牛」は、炭火で焼き上げた熟成香漂う牛肉に、アスパラガスとエシャロットのオランディーソースを合わせた一品。牛の旨味を凝縮したジュードブッフに、行者ニンニクと鮫節を合わせた軽やかなソースでいただく。アヴァンデセール「黒文字」は、柑橘系の爽やかな香りが特徴の黒文字を使い、ウドと発酵レモンを黒文字茶でマリネし、すっきりとした甘さのカルダモンのアイスクリームと合わせた。最後のデセールは、カモミールのサヴァランに苺と桜のムースを合わせた春らしさあふれる一皿。渓流テラスのアミューズから締めのデザートまで、およそ3時間半という長めの食事時間でありながら飽きることなくすべてのお皿に、青森らしさと旬の美味しさが込められた、ここでしか食せない渾身のコースだった。(※時期により、提供内容、食材の産地が異なる場合がある。)

筆者が同ホテルを訪れたのは5月、新緑がまぶしく、年間で最も清々しい空気に包まれる季節だった。ホテルの渓流コンシェルジュ(ネイチャーガイド)が案内するツアーでは、その季節ごとの最も美しい景色を案内してくれるツアーを行っている。秋には鮮やかに色づく紅葉、冬には雪景色や氷瀑の幻想的な光景が広がり、いつ訪れても自然の神秘を感じながら癒され、素晴らしい景色に出会える。何度でも訪れたいと思える一軒だった。

information


fukui_01info星野リゾート 奥入瀬渓流ホテル

住所:青森県十和田市大字奥瀬字栃久保231
Tel:050-3134-8094(星野リゾート予約センター)
客室数:187 室・チェックイン:15:00/チェックアウト:12:00
料金:1 泊 25,100 円~(2名1室利用時1名あたり、税込、夕朝食付)
アクセス:アクセス:JR 八戸駅・青森駅から車で約1時間30分(無料送迎バスあり・要予約)

◆渓流スイートルーム
料金 :87,990 円〜(2 名 1 室利用時 1 名あたり、税込、夕食ビュッフェ、朝食付)
広さ :120 平米 定員 :1 室あたり 6 名 客室数 :2 室
◆フレンチレストラン「Sonore」
料金:1名22,780円(税・サ込)
ビュッフェ付プランから変更の場合は、差額+15,730円(@22,780-@6,050)を現地払い。
未就学児の利用、同席不可
◆渓流テラス:朝食
料金:大人1名4,050円(税・サ込)
ビュッフェ付プランから変更の場合は、差額+750円(@4,050-@3,300)を現地払い。
もう1つの朝食会場はビュッフェレストラン「青森りんごキッチン」のみ。

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