shiroiya_main1
プリンセス史上最大17万5千トンクラス客船となる新造船サン・プリンセス。
クルーズの魅力については、これまでveritaでも何度か紹介してきた。乗船料に、食費やエンタメ代がすべて含まれる安心感、寝ているうちに次の寄港地に着き、最低限の荷物だけで観光に出かけられる気楽さ──。一度、乗ったらすっかりクルーズの旅の虜に。一度クルージングを経験すると、リピーター率が高いということにも頷ける。

今回、乗船したのは、アメリカを拠点とするプリンセス・クルーズから2024年2月にデビューしたばかりの新造船「サン・プリンセス」。クルーズ船にはそれぞれ個性があるものだが、新造船はやっぱり快適だ。どこもかしこもピカピカで気持ちいいし、細かい点にはなるが、ベッド周りにはUSB充電ポートもあるし、シャワーの水圧も申し分ない。
fukui_01ph01(写真)イタリア・ジェノヴァ出航時の様子。名残惜しむように多くの人がデッキに出ていた。

筆者は、今回、バルセロナから、イベリア半島南にある英国の海外領土ジブラルタル、フランス・マルセイユ、イタリア・ジェノバ、ラスペツィアに寄港し、ローマで下船する8日間のクルーズに乗船した。恥ずかしながらジブラルタルが英国の領土だと初めて知った。位置的にスペインかと思っていた。筆者にとっては数年ぶりの地中海クルーズだったが、毎日のように性格が異なる街を旅できる地中海クルーズはやはり楽しい。

クルーズ船に乗ったことのない人は、「クルーズ船なんてどれも大差ないんじゃない?」と思うかもしれないが、全然違いますよ、と筆者は声を大にして言いたい。クルーズ会社が異なればもちろん違うし、同じプリンセス・クルーズの船でも、日本発着で運航している「ダイヤモンド・プリンセス」と、「サン・プリンセス」ではタイプがまったく異なる。どちらがいい、悪いではなく。この記事では、新造船の「サン・プリンセス」の魅力をお伝えしたいと思う。

洋上の新楽園「サン・プリンセス」で美食三昧の地中海クルージングsen

「サン・プリンセス」には、同船ならではの魅力がたくさんある。そして巨大だ。総トン数175,500トン、乗客定員4,300名、さらに全長は東京タワーよりも長い345mと、プリンセス・クルーズの船の中では最大級だ。さらに新造船だけあって今ドキである。私見になるが、この船の一番の特徴は、ブランド初の液化天然ガス(LNG)を燃料とした船だということだろう。これにより温室効果ガスの放出が大幅に削減されるという。料飲施設の充実ぶりにも目を見張るものがあった。その数、なんと30。すべての料飲施設に行くのは至難の業だ。 fukui_01ph01fukui_01ph01(写真)上/サン・プリンセスを象徴する施設のひとつ、客船のガラス円球型のピアッツァ。7~9デッキの3層吹き抜けで、中央に配されたステージではさまざまな催し物が行われ、そのステージを囲むようにレストランやバーがある。下/30もの料飲施設を完備。写真は、クラシカルでエレガントな雰囲気の中で、最高級のビーフ、チョップ、シーフードを提供する「クラウン・グリル」。

船上での料飲のシステムを手短に解説すると、「サン・プリンセス」に限ったことではなく、一般的に、クルーズ船の中には、無料(乗船料に含まれる”という意味)で利用できるレストランと、追加料金がかかるレストランがある。ドリンクは基本的には一部を除き有料だ(高額なクルーズはドリンクも乗船料に含まれる場合もある)。ただ、今回はお得なドリンクパッケージを利用したので、料金を気にすることなく、全力で飲むことができた。お酒を嗜む方ならば、ぜひパッケージプランをおすすめしたい。なお、プリンセス・クルーズのパッケージ料金プランには、ドリンクだけでなく、高速WI-FIの接続料金が含まれているなど、ここに書ききれないくらいたくさんのメリットがある。筆者が今回、利用したプリンセス・プレミアは、有料のレストランが無制限で、しかも無料で利用可能だった。さらに、「サン・プリンセス」のレストラン・バーには、それぞれの店舗に限定カクテルが用意されており、同船のために用意された新しいカクテルの数はなんと218種! 飲み甲斐がありすぎて困ってしまうほどだ。ドリンクパッケージを錦の御旗に夜な夜なバーホッピングを満喫した。とはいえ、1週間の乗船では、当然すべてのカクテルを飲み切るのには無理がある。これは次回の乗船時の楽しみにとしてとっておきたい。 fukui_01ph01fukui_01ph01(写真)上/魅惑的なマジックの世界とミクソロジーの芸術を融合させた非日常の体験を提供する「スペルバウンド・バイ・マジック・キャッスル」。下/芸術的なマジックのほか、マジック・キャッスルのエッセンスのエッセンスを余すところなく盛り込んだ、手品のようにドラマティックに提供されるカクテルも楽しい!

エンターテイメント×ガストロノミー!船上のエキサイティングなレストラン選び

そんなわけで、レストラン選びはワクワクだし、かつ真剣だ。「船上の食事は、陸の上と比べるとレベルが落ちるのでは」と決めつけるのは早急だ。「サン・プリンセス」は、レストラン数が多いだけでなく、質も高かった。さすが新造船。たとえば、ワールド・ピザ・チャンピオンシップで13度の優勝を誇る、ピザ界のレジェンド、トニー・ジェミニャーニ氏とのコラボによる「アルフレッド・ピッツェリア」のピザは、都内で日常的に食べているピザよりも美味しかった。近所にあったら通い詰めているのではと思うほどだ。アメリカに複数の店舗を持ち、テレビ番組「アイアンシェフ(料理の鉄人)」でもその名を知られている、日本人シェフの大桑誠氏が監修する寿司レストラン「マコト・オーシャン」には、日本酒や日本のビールの用意もあった。ほかにもイタリアの肉職人、ダリオ・チェッキーニ氏によるスペシャリティ・ビストロ「ザ・ブッチャーズ・ブロック・バイ・ダリオ」など、一度ならず、複数回足を運びたいレストランばかりだ。 fukui_01ph01(写真)左/「ブッチャーズ・ブロック・バイ・ダリオ」。右/「アルフレッド・ピッツェリア」。

終航海日に実施される「ロイヤル・アフタヌーン・ティー」も洗練されていた。同アフタヌーンティーを監修するのは、エリザベス女王、ウェールズ公妃ダイアナ、ウィリアム皇太子、ハリー王子の専属シェフを務め、5名のアメリカ大統領に仕えた経歴を持つシェフのダレン・マグレディ氏。クロテッドクリームとジャムを添えたスコーン、ティーサンド、クッキーなど、伝統的なメニューがそれぞれ唸るくらいに味わい深い。食している間には、司会者がこだわりのポイントを教えてくれたり、マグレディ氏が自身の経験やストーリーを語る映像が流れたりと、エンターテインメント性の高さにも目を見張った。

魅惑的なマジックの世界と料理やミクソロジーの芸術の合わせ技に度肝を抜かれる、マジックとアドベンチャーに彩られた非日常の没入型ダイニング体験ができる「スペルバウンド・バイ・マジック・キャッスル」の印象も鮮烈だ。コースメニューを楽しんだ後は、斬新なオリジナルカクテルをいただきながら、マジックショーが展開されるのだ。

中でも筆者の心に一番刺さったのは「ラブ・バイ・ブリット」。世界的なポップアーティストであるロメロ・ブリット氏とのコラボレーションによる、愛とアートをテーマとしたレストランなのだが、レストランに足を踏み入れた瞬間、心が溶けそうになる。設えや食器、料理のプレゼンテーションまで、ハートに次ぐハート。バターですら「LOVE」と象られているではないか。「かわいい~」と歓声を上げるオンパレード。ロケーションも17デッキの最後方に位置しており、「LOVE」に満ち溢れた世界から眺める夕日に照らされた船の軌跡はとびきりロマンティックだ。 suimeikan05(写真)世界的なポップアーティスト、ロメロ・ブリット氏とのコラボによる「ラブ・バイ・ブリット」。アートに彩られた、「Love」を祝い、愛でるスペシャリティ・レストランだ。プリンセス・クルーズの料理部門責任者でもあるルディ・ソダミン氏は、ブリット氏の世界観を大切にしながら、味覚だけでなく、視覚でも堪能できるコースに仕立てた。写真は、「牡蠣のレモングラス・カフィール、みりん、ゴールドフレーク添え」(中央)、「マグロとアボカド、ザクロ、とうがらし添え」(左)。オリジナルラベルのワインも用意している。

新造船「サン・プリンセス」が誇るスイート客室

最後に宿泊した部屋についてご紹介したい。今回、筆者が宿泊したのは「カバナ・ジュニア・スイート」。客室とバルコニーの間に「カバナ」ルームが存在する、ほかの船では見たことのない造りの客室だ。プリンセス・クルーズの船の中でもこのカテゴリーがあるのは、現在、「サン・プリンセス」のみだという。「カバナ」ルームにはソファやテレビもあってゆったり寛げる。旅程が長期に及ぶクルージングの旅の最中で洗濯物を干すのにも重宝し、屋外と屋内のいいところ取りをしたようなスペースだった。このカテゴリーの部屋に乗船した知人は、「カバナ」ルームで、毎朝、ヨガをしていたそうだ。なるほど、楽しみ方は幾通りもありそうだ。
fukui_01ph01(写真)メインルームとバルコニーとの間にカバナを備えた「カバナ・ジュニア・スイート」。

船上のお気に入りスポットは、自分だけの旅の思い出を彩る

クルーズ船に乗ると、筆者はその船の中でのお気に入りの場所を探す。大きな「サン・プリンセス」には、プレシャスな場所はいくつもあったが、とりわけ筆者が何度も足を運んだのは、デッキ16前方の「シー・ビュー・テラス」だ。「ザ・ドーム」から繋がるプールも素敵だし、ジャグジーもある。当然のように、カクテルを片手にジャグジーに浸かるというクルーズらしいことを満喫できる。「さあどうぞ寛いでくれたまえ」とばかりに、デッキチェアもたくさん置かれていて、ディナー前にここで1杯アペリティフを楽しむのがルーティンとなった。
fukui_01ph01(写真)最上部に位置する本格的なガラス張りの施設「ザ・ドーム」。サントリーニ島のテラスから着想を得て設計された。
fukui_01ph01(写真)サン・プリンセスのために用意されたオリジナルカクテルは218種類。バーホッピングしているとあっという間に時間が過ぎていく。
fukui_01ph01(写真)サンセットのタイミングをどこで過ごすか──。これを考えるのもクルーズの醍醐味だ。部屋のバルコニーから見るのもいいし、デッキにあるジャグジーに入りながら眺めるのも格別!

クルージングを終えるといつも思うのだが、「今度乗船する時にはどこで何を食べようか。」「あのメニューはもう一度食べたい」など、下船してだいぶ経つというのに、いつまでも乗船時のことを思い出しては、その夢のような思い出に耽ることができるのだ。洋上の食のパラダイス、万歳!

text by Aya Hasegawa

■プリンセス・クルーズ
https://www.princess.com/en-int/ships-and-experience/ships/su-sun-princess