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フォーシーズンズホテル大阪のグランドオープンからしばらく経った10月末、満を持して「鮨 ラビス 大阪 ヤニック・アレノ」(以下、「鮨 ラビス」)がオープンした。その名のとおり、モダンフレンチの巨匠ヤニック・アレノ氏が監修するフレンチと鮨を提供するイノベーティブレストランだ。

アレノ氏は、現在フランス国内にミシュラン三ツ星レストランを2軒同時に持つ唯一の存在であり、また、世界の17のレストランのシェフとしてミシュランの星を合計15個獲得している押しも押されもしないスターシェフだ。「そんなフランス料理の大御所がなぜ鮨を?」「よくあるフュージョン鮨なのか?」と思うかもしれない。正直、私もこのニュースを聞いた時はそう思ったのだが、知り合いの食通たちは、「『鮨 ラビス』は俗にいうフュージョン鮨とは一線を画す」「やっぱりアレノはすごい」と口を揃える。一度は体験せねば、パリ、モンテカルロは遠いけれど、大阪ならなんとかなると、オープンした週にいそいそと足を運んだ。

フレンチのエッセンス加えた、唯一無二の鮨体験。sen
fukui_01ph01(写真)ヤニック・アレノ氏。

20歳の時に初めて江戸前鮨を口にし、その繊細さに魅了されたアレノ氏は、2018年、銀座の名店で活躍していた岡崎泰也氏を迎え、パリに「ラビス」の1号店を、2024年7月にはモンテカルロに「ラビス」2号店をオープン。いずれも伝統的な鮨の技法に、アレノ氏が習得してきたさまざまなフレンチのエッセンス加えた、唯一無二の美食体験を提供し、フランスの美食家たちを魅了してきた。
fukui_01ph01(写真)高級感溢れる一枚板のカウンター席は、37階からの眺望も楽しめる。

フォーシーズンズホテル大阪内の店舗は「ラビス」の3店舗目であり、フランス国外における初の店舗でもある。メニューは伝統と革新が織りなす「おまかせ」のみを提供。今回、私がいただいたのは、夜の「おまかせ」コースだ。夜は、「エモーション」と名付けられた和のエッセンスを取り入れた前菜(4品)と、メインとなる握り(10貫)、デザート(4品)という3部構成(内容は季節や食材の仕入れによって異なる)。ドリンクも選択肢も多彩だが、ワインにも日本酒にも精通するソムリエが提案するアルコールペアリング(4杯~、1万8000円~)をお願いするのが賢明かもしれない。

フランスのエスプリが散りばめられた独創的な料理の数々。sen

アレノ氏が自信を持って繰り出す「おまかせ」は、うれしい驚きの連続だった。前菜は日本の食材や器を使いながらも、アレノ氏らしくフランス料理の技量を取り入れた、まさに“ここでしか味わえない”料理が続々と展開される。「エンダイブとトレビスのサラダ」はブーケをイメージした前菜。トレビスとアンディーブの間に洋ナシとマッシュルームをはさみ、白醤油のソースをかけたものを、花束のようにまとめ、鮨を食べるように手づかみでいただく。「アーティチョークの豆腐、スモーク川カマスの卵」は、アレノ氏がごま豆腐にインスピレーションを受けて完成させたもの。ピュレにしたアーティチョークを葛で固め、上にスモークしたカマスの卵と、ローストしたひまわりのタネ、大阪をイメージした青のりの天かすを散らし、さらにマジョラムのオイルをかけた。 fukui_01ph01fukui_01ph01(写真)上/「アーティチョークの豆腐、スモーク川カマスの卵」下/「エンダイブとトレビスのサラダ」

握りを担当するのは、八芳園をはじめ国内外で研鑽を積んだ安田至氏だ。本格的な江戸前鮨でありながら、揚げたエシャロットと生姜と合わせて握り、上にトリュフをかけた大トロ、醤油を塗った上にフルール・ド・セルをのせた「クエ」、鰹節をシャリとネタの間に挟んでいただく「漬けマグロ」など、どこかフランスのエスプリを感じさせる。そんな個性的なネタに、玄米酢と米酢で仕上げたふくよかなシャリが寄り添う。
fukui_01ph01fukui_01ph01(写真)上/握り最後を飾る「大トロ」。下/デザートの1品目「イチゴの砂糖窯焼き、ウイキョウ」

握りとデザートの間に供された「大地と海のコンソメスープ」は、続々と登場する“ご馳走”に興奮気味の内臓に染み渡った。デザートも初めていただくものばかりだ。「白味噌と麦のアイスクリーム、すだちのジュレ」は、あぶって軽く焦がした京都山利の白味噌を使用している。きのこのエキスを使ったソースも存在感抜群だ。もはや何がなんだかわからない。いったいなぜそんなことを思い付くのだろうか。食べているうちに、どんどん楽しくなってくる。伝統と革新、和と洋の調和を追求し、そして、斬新なアイデアに満ち溢れた新しい鮨のかたちは、きっと心に刻まれるはず。ちなみに「ラビス」とはフランス語で「深海」を意味する。時間と予算が許せば、大阪の天空にある「深海」に毎月にでも通いたいと切に思う。

information


fukui_01ph01フォーシーズンズホテル大阪

所在地:大阪府大阪市北区堂島2-4-32
Tel:06-6676-8682

鮨 ラビス 大阪 ヤニック・アレノ(Sushi L’Abysse Osaka Yannick Alléno )

Tel:06-6676-8591 (レストラン予約番号)
営業時間:ランチ12:00~15:00、ディナー18:00~21:00
料金:おまかせランチ 20,000円、おまかせディナー 35,000円(いずれも税・サービス料込)
定休日:水曜日