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ロンドンのオックスフォード・ストリートにあるイギリスの高級百貨店 セルフリッジズ (Selfridges)。

クラシカルな街並みと最先端カルチャーが共存するロンドン。アート、建築、ファッション——あらゆる場面に英国の美意識が息づき、世界三大都市にふさわしい存在感を放っている。一方、イギリス人が“本当の豊かさ”を感じるのは、静かな田園風景の中。 広大な緑にたたずむマナーハウスや、季節を慈しむようなスローライフには、都市では得られない静けさと時間の余白がある。 都会の洗練と、カントリーサイドのチルな豊かさ。どちらにも英国らしい美意識と豊かさに根ざしている。今回の特集では、“シティとカントリー”の2つの視点から、前編では首都ロンドン、後編では田園に点在する美しい村々を訪ねて、その魅力をお届けしたい。

City/LONDON
クラシカルでありながら最先端。過去と今が美しく共鳴するロンドン。sen
artsinhk2-8パーラメント・スクエア・ガーデンのチャーチル像。

荘厳なロンドン塔やビッグベンは、誰もが写真で一度は目にしたことのある景色だが、実物を前にすれば、悠久の時がこの街に積み重ねられてきたことを実感する。街のあちこちには記念碑や彫像がさりげなく佇み、近代的な高層ビルや忙しなく行き交う人々の中に、ごく自然に溶け込んでいる。 artinHK1-1面白いのは、一見モダンな建物でも、ふと目を上げれば、意外なほどクラシカルな表情を見せてくれること。屋根まわりには繊細な装飾や古典的な意匠が残されていて、この街のモダンとクラシックの絶妙な調和に感嘆する。

ロンドンの名所を効率よく巡るなら、2階建ての赤いロンドンバスや名だたる観光スポットが集中するテムズ川周辺を一望できる水上バスがおすすめ。天井のないバスで風を感じながら、イヤホンガイド片手に街をぐるりと巡るのも楽しいし、テムズ川から眺めるロンドンは、地上とはまた違った表情を見せてくれる。

また、大英博物館をはじめ、ナショナル・ギャラリーやV&Aなど、名だたるアートスポットのほとんどが無料で公開されている(一部特別展を除く)のも、ロンドンならではの懐の深さ。その根底には、芸術は貴族などの一部の特権階級のものではなく、すべての人がアクセスできるべきだという文化的な価値観がある。800万点にも及ぶ古今東西の重要な遺物、芸術品、書物を所蔵する世界屈指の博物館である大英博物館ひとつとっても、とても1日では見て回りきれないほどの規模感だ。日常的に豊かな文化芸術に触れられるこの贅沢さにおいて、ロンドンに並ぶ都市は、世界にそう多くはない。

artsinhk2-8artsinhk2-9artsinhk2-8上/ヴィクトリア&アルバート博物館 Photo by Masakatsu Ikeda 中/ナショナル・ギャラリー Photo by Masakatsu Ikeda 下/大英博物館図書室

information


ヴィクトリア&アルバート博物館(Victoria & Albert Museum)
住所/Cromwell Rd, London SW7 2RL

ナショナル・ギャラリー(National Gallery)
住所/Trafalgar Square, London WC2N 5DN

大英博物館図(British Museum)
住所/Great Russell St, London WC1B 3DG
コロナ記念碑
National COVID Memorial Wall


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テムズ川沿い、ウェストミンスター橋のたもとに佇む「ナショナル・コロナ・メモリアル・ウォール(National COVID Memorial Wall)」。2021年、市民の手で始まったこの記念碑は、約500メートルにわたり赤いハートが描かれ、それぞれがひとりの命を象徴している。名前やメッセージも添えられ、それら一つ一つを眺めていると深い哀悼の意が呼び起こされる。いまは静かに“あの時”を語り継ぐ場所となっている。

INFO: ナショナル・コロナ・メモリアル・ウォール(National COVID Memorial Wall)


ロンドンの空気を醸成する老舗デパートの存在感。sen
ロンドンには、長い歴史を持つ老舗デパートが数多く存在し、それぞれが独自の魅力を持っている。花柄の“リバティ柄”で知られ、英国のクラフツマンシップと美の系譜を今に伝える「リバティ」、トレンドブランドが揃う一方で、空間や接客には老舗らしい品格が漂う「セルフリッジ」、ファッションやインテリア、キッチン用品から電化製品、ギフトまで、暮らしに必要なものがすべて揃う「ジョン・ルイス」。それらはいずれも徒歩圏内にあり、街歩きの合間に気軽に立ち寄れるのも魅力のひとつだ。中心地で街歩きの合間の休憩スポットとして、デュークストリートにあるティーショップ「H.R.Higgins」はおすすめだ。カジュアルながら本格的な英国紅茶とおいしいスコーンがいただける。取材時は日本人スタッフがいるお店で気軽に立ち寄れた。
artsinhk2-6リバティ ロンドン photo by Masakatsu Ikeda
artsinhk2-6セルフリッジのあるボンド・ストリート周辺には、小さなブティックや老舗店が立ち並び、ロンドンらしい洗練された街並みが広がる。

英国らしい感性とともに、ロンドンのトレンドに出会えるデパートでのショッピングを楽しんだら、少し足を伸ばしてハイドパークへ。そこはまるで、都市の鼓動のすき間に風と緑の静寂がひっそりと広がっているような場所だ。ロンドンは都心でありながら、街のあちこちに緑あふれる公園が点在し、いつでもそっとくつろげる空間がある。大都市でありながらもアートにも自然にも気軽に触れられる、そんなロンドンの魅力は、この街と、そこで暮らす人々の豊かさのあり方を静かに物語っている。
artsinhk2-6ハイドパーク photo by Masakatsu Ikeda

information


リバティ ロンドン(Liberty & Albert Museum)
住所/Regent St., Carnaby, London W1B 5AH

セルフリッジズ(Selfridges)
住所/400 Oxford Street, London W1A 1AB

ジョン・ルイス(John Lewis)
住所/300 Oxford Street, London W1C 1DX


≫後編 coming soon

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グルメスポット

The Ivy Chelsea Garden
(アイヴィー チェルシー ガーデン)

緑に包まれるロンドンの名店
ロンドン・チェルシー地区のキングス・ロードに佇む英国料理レストラン「The Ivy Chelsea Garden」は、英国の伝統をベースに、モダンなエッセンスを加えたメニューが揃い、朝から夜までトレンドや美意識に敏感なロンドナーたちが集う。洗練されたボタニカル空間と奥に広がるガーデンテラスが魅力の人気の一軒。朝の光を浴びながらの朝食や、午後の柔らかな日差しの中でのランチは格別だ。
artinHK2-1 »アイヴィー チェルシー ガーデン(The Ivy Chelsea Garden)



【イギリス特集】
City and Country ロンドンとカントリーサイド、美しい英国を巡る旅 前編
City and Country ロンドンとカントリーサイド、美しい英国を巡る旅 後編 coming soon