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シンガポールに行ったことがなくても、「ラッフルズ シンガポール」の名前は耳にしたことがあるのではないだろうか。イギリス統治時代の面影を残すコロニアル調の建物は、テレビや雑誌で何度か見るうちにいつの間にか脳裏に焼き付いていた。いつかは泊ってみたい──。長年、そう思っていたがついにその時は来た。 一言でいってしまえば、どこを切り取っても非の打ちどころのない素晴しいホテルだった。宿泊料金はもちろんお安くはない。しかし、日本に戻ってきて、何度思い返しても、あれは「完璧な空間」だったことを思い出す。「ラッフルズ シンガポール」に泊まることを目的に、またシンガポールを訪れたいとさえ思うのだ。

創業以来、セレブリティや各界の名士が集った、東洋屈指の社交空間。sen

artinHK1-1開業は1887年。世界的なホテルブランドや最先端の高級ホテルが林立するシンガポールでも唯一無二の存在だ。アルメニア人のサーキーズ兄弟が、東南アジアの重要な交易拠点として、著しい勢いで発展を遂げていたシンガポールに誕生させた。ホテル名は、イギリスの植民地行政官として、現代シンガポールの創設・発展に貢献したスタンフォード・ラッフルズ卿(Sir Stamford Raffles: 1781-1826)に由来。シンガポールで初めてエアコンと電気を導入し、バトラーサービスを取り入れたホテルとしても知られている。

創業当初から東洋随一の社交の場として賑わい、時代を彩るゼレブリティや各界の要人たちをもてなしてきた。エリザベス女王、マイケル・ジャクソン、ジャッキー・チェン、チャーリー・チャップリンやエリザベス・テイラーイギリスの小説家サマセット・モームは、「Raffles stands for all the fables of the exotic east”(ラッフルズは東洋の神秘そのもの)」と称している。

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約2億ドルの大規模リニューアル ― そして継承されるコロニアルの美学。sen

2017年から約2年間、約2億ドル(約310億円)に及ぶ大規模な改修工事を慣行。コロニアル時代を彷彿とさせるクラシックな雰囲気を大切にしながら最新の設備とデザインで生まれ変わった。

ホテルに着くと、白いターバンを巻いたドアマンがドアを開けてくれる。彼がゲストを非日常の世界に誘ってくれるかのように、同ホテルを象徴する存在でもあるのだ。華やかで凛とした空間に足を踏み入れるとそこはたちまち非日常 — 背筋が伸びた思いがした。115室の客室は、すべてリビングと寝室が分かれたスイートルーム。今回、筆者が宿泊したのは「パームコート・スイート」。リビングスペースがあり、その奥にベッドルーム、さらにその奥にバスルームがある。天井が高く、素晴らしい解放感がある。白を基調としたシックなバスルームには猫足のバスタブがあり、筆者のお気に入り。滞在中はつい何度も入浴しては、くつろいでしまった。 fukui_01ph01fukui_01ph01(写真)「パームコート・スイート」の内装。

リビングのテーブルには、ウェルカムフルーツと共に、6つのくぼみがある木製トレイが置かれていた。添えられていたカードを読むと、オリジナルのチョコレートがいただけるとのこと。さっそくバトラーにお願いしてみた。ウェルカムドリンクは、このホテルが発祥とされる「シンガポール・スリング」。チェックイン後に挨拶に来たバトラーが、アルコールの有無や提供のタイミングを丁寧に確認してくれる。好きな場所で、好きなタイミングで楽しめるが、今回はその場でいただくことにした。
fukui_01ph01(写真)共用通路にテーブルと椅子が並ぶ風景は、ラッフルズならではの趣き。

多くの客室の前には、共用通路に面して椅子とテーブルが置かれている。通路に面した椅子では、多くのゲストがコーヒーを飲みながら本を読んだりと、思い思いに寛いでいた。ここで、「シンガポール・スリング」をいただくことにしよう。1915年、女性が公の場でアルコールを飲むことが好ましくないとされていた時代に、このカクテルは誕生した。ドライジンとチェリーリキュールをベースに、パイナップルジュースを加えた華やかなバラ色の一杯は、中庭のグリーンによく映える。 fukui_01ph01(写真)ホテル専属のヒストリアン(歴史学芸員)が案内する「ヒストリーツアー12」

ホテル専属のヒストリアン(歴史学芸員)が案内する「ヒストリーツアー12」は、ぜひ体験したいアクティビティのひとつ。1887年の開業当時から時を刻み続けるゼンマイ式の柱時計や、ロビーラウンジにあるオルゴールの紹介に加え、ツアーの終盤には、歴代の著名人たちの写真が飾られた「Hall of Fame」へと案内される。当日の空室状況によっては、最上級のスイートルームを見学できることもある。

そもそも「ラッフルズ シンガポール」はホテルそのものが観光名所。敷地内には、9つの料飲施設をはじめ宿泊客以外も利用できるスポットがいくつもある。わずか10室のバンガローから始まった同ホテルだが、現在は、別館ウイングやショッピングアーケードを増築。直営の料飲施設やブティックだけでなく、テナントが入った一大複合施設となっている。“後編”では、リニューアルした施設内の各スポットをご紹介していこう。

Text by Aya Hasegawa

information


fukui_01ph01ラッフルズホテル(Raffles Singapore )

所在地:1 Beach Road, Singapore 189673
Tel:(+65) 6337-1886