(写真)長谷川シェフ(左)と「ジンボ ミナミ アオヤマ」の神保佳永シェフ(右)。

東京世田谷の閑静な住宅地に、注目のイタリアンの新店がオープンした。ビルの5階に位置する「ピエネッツァ フカサワ」はカウンター中心で、夜には東京タワーやスカイツリーの夜景も遠くに望める。 シェフを務めるのは長谷川泰(ハセガワ ユタカ)さん。南青山の名店「ジンボ ミナミ アオヤマ」で、オープン以来神保佳永シェフの右腕として活躍した料理人だ。今回長谷川シェフがテーマに選んだのは、世田谷食材とご自身の出身地である奈良との融合。世田谷産の上質な野菜や果物をチョイスし、奈良の伝統食材や料理文化を加えて独自のイタリア料理を作り出す。

世田谷野菜と奈良食材の一皿を、ジャズが流れる洗練空間で味わう。sen

長谷川シェフが最も力を入れているのが最初に登場する「8種類の前菜盛り合わせ=アンティパスト・ミスト」だ。カボチャと奈良の干し柿の冷製スープ。イチジク、とストラッチャテッラのブルスケッタ。世田谷産野菜のサラダ。奈良の郷土料理「しきしき」に見立てたピアディーナ。エボダイの昆布締めカルパッチョ。ナスとモッツァレッラのグラタン。レンコンと豚肉のスピエディーノ。ピリ辛トマトソースのアランチーノ。冷たい前菜に加え、カウンターで調理仕立ての温かい前菜が次々に登場するのが嬉しい。

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(写真)「8種類の前菜盛り合わせ=アンティパスト・ミスト」。冷前菜と温前菜をタイミングよくサーブし、ベストな温度で堪能できる。

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(写真)ジャズが響く空間で、深沢らしい上質な空気感に包まれながら、カウンター越しに料理のライブ感を楽しめる。

「宮城産サンマのスパゲッティ」はアーリオ・オーリオ・エ・ペペロンチーノをベースにサンマの身と肝を炒め、奈良のひしおが隠し味に使われている。メインの肉料理は「豚ロース肉のロースト=アリスタ」で世田谷青みかんの皮を使った自家製柚子胡椒に奈良漬をあわせたペーストでいただく。デザートの「深沢プリン」はほろ苦いカラメルが印象的な大人の味のプリンだ。

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(写真)宮城産サンマのスパゲッティ」。

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(写真)「豚ロース肉のロースト=アリスタ」。器は佐賀・有田の「カマチ陶舗」製で、料理の存在感を引き立てる。

「ピエネッツァ フカサワ」では季節の食材を使ったアミューズ、アンティパスト・ミスト、パスタ2種、メインディッシュ、デザートという合計6皿のおまかせコース。「素材を活かし、奈良の文化も少しずつ取り入れながら、シンプルでイタリアらし い味わいを作りたい」という長谷川シェフの料理をいただきながら、世田谷の夜景を眺める。都心の喧騒から離れて静かに過ごしたい大人のための上品なイタリア料理店だ。

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(写真)提供時に焼き印を加えるライブ感あふれる「深沢プリン」。立ちのぼる香りが食欲を誘う。

text & photo by Masakatsu Ikeda

information


Pienezza FUKASAWA(ピエネッツァ 深沢)
所在地:東京都世田谷区深沢 4-33-13 深沢グランブロス 5F
Tel:03-6805-9952
営業時間:ディナー 火~土 18:00~23:00 (22:00 最終入店 ) 、ランチ 土日のみ 12:00~15:00 (14:00 最終入店 )
定休日:月曜日
席数:21 席 ( カウンター 13 席 / テーブル席 8 席 )

予約方法:電話 / tablecheck

profile


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池田匡克
ジャーナリスト/イタリア国立ジャーナリスト協会会員

1967年東京生まれ。1998年よりイタリア、フィレンツェ在住。イタリア料理文化に造詣が深く、イタリア語を駆使してシェフ・インタビュー、料理撮影、執筆活動を行う。著書に『伝説のイタリアン、ガルガのクチーナ・エスプレッサ』『シチリア美食の王国へ』『イタリアの老舗料理店』『世界一のレストラン オステリア・フランチェスカーナ』など多数。2014年イタリアで行われた国際料理コンテスト「ジロトンノ」「クスクス・フェスタ」などに唯一の日本人審査員として参加。2017年イタリア料理文化の普及に貢献したジャーナリストに贈られる「レポーター・デル・グスト」受賞。2023年、日本全国の北海道から沖縄まで100店の高級イタリア料理店が参加する大型レストランイベント「ITALIAN WEEK 100」のディレクターに就任。