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コロナ禍以降のホテル開業ラッシュ、そして急速に回復したインバウンド需要によって、ここ数年の京都には“混雑する観光地”という印象を抱いていた人も少なくないだろう。静かな京都から、いつしか足が遠ざかっていた——そんな日本人も多かったはずだ。ところが今、再び京都に変化の兆しが訪れている。

今回、筆者はゴールデンウィーク期間中の平日に東山エリアを訪れた。もちろん海外からの旅行者の姿は多い。しかし一方で、インバウンド需要を背景に、京都では世界水準のラグジュアリーホテルが次々と誕生し、日本文化や京都の伝統を現代的な感性で再解釈した、新たな京都体験も生まれている。磨き上げられた京都の魅力は、実は日本人にとっても新鮮な発見に満ちている。見慣れていたはずの文化や美意識に新たな角度から触れられる今、京都は改めてその価値を再発見したい旅先となっている。

東山の高台に佇む、“静けさを味わう”極上ラグジュアリー。sen世界各地でラグジュアリーリゾートやスパを展開するバンヤン・グループが、日本におけるフラッグシップとして2024年に開業したのが「バンヤンツリー・東山 京都」だ。世界遺産・清水寺を間近に望む東山の高台という希少なロケーションにありながら、館内には驚くほど穏やかな空気が流れる。静寂と余白を楽しむための隠れ家のような存在である。
shiroiya_ph04 ホテル全体のコンセプトは、日本の伝統芸能である能の美意識と、「幽玄」の思想に着想を得ている。設計を手掛けたのは世界的建築家・隈研吾氏。東山の山裾という地形を活かし、ヒノキなどの天然木材を用いた建築は周囲の景観に美しく溶け込む。さらに敷地内には京都の職人によって再生された庭園と竹林が広がり、ホテル全体がひとつの作品のような佇まいを見せる。
shiroiya_ph04そんなホテルの象徴ともいえるのが、中庭に設けられた能をコンセプトにした舞台である。能楽の公演や芸舞妓による舞踊鑑賞が行われるほか、ホテル内レストラン「りょうぜん」から食事を楽しみながら鑑賞することもできる。宿泊施設でありながら、日本の伝統文化に自然に触れられる環境は実に贅沢だ。
shiroiya_ph04 また、このエリアでは希少な天然温泉を備えている点も見逃せない。滞在するならぜひ「ONSENリトリート」カテゴリーの客室を選びたい。プライベート温泉に浸かりながら竹林や中庭の舞台を眺める時間は格別だ。温泉はスパにも活用されており、シグネチャートリートメント「ロイヤル・バンヤン」と組み合わせたウェルネス体験も楽しめる。
shiroiya_ph04宿泊者向けには、中庭の舞台で行われる箏と尺八の演奏会や雅楽公演などの文化体験も用意されているほか、人力車体験など京都ならではのアクティビティも手配可能だ。京都には数多くの文化資産があるが、日本人であっても実際に触れる機会は意外に少ないもの。世界中のゲストに向けて磨き上げられた京都文化体験に自然にアクセスできるのは、現代のラグジュアリーホテルならではの魅力だ。滞在そのものが、京都の美意識や文化を再発見する時間となる。

京都の名店が手掛ける京美食と日本酒の饗宴sen
そして、このホテルでいま最も注目したい体験のひとつが、2026年3月にスタートした「りょうぜん 杦 別邸」である。京都の美意識と食文化の奥深さを味わう、滞在のハイライトとなるだろう。
カウンター8席のみのこの空間は、ミシュラン一つ星を獲得する「日本料理 杦 SEN」の別邸として展開される特別ダイニング。毎週木曜・金曜のディナータイム限定で営業され、能の世界観を取り入れた静謐な空間で、京都ならではの食体験を提供している。わずか8席だからこそ生まれる、料理人との距離の近さも魅力だ。

手掛けるのは、「菊乃井」や「室町和久傳」で研鑽を積み、ロンドンでのプライベートシェフ経験も持つ杉澤健料理長。2018年の帰国後にオープンした「日本料理 杦 SEN」は、わずか半年で「ミシュランガイド京都・大阪+鳥取2019」にて一つ星を獲得し、その後も高い評価を維持し続けている名店だ。
shiroiya_ph07実際に体験してまず印象的だったのは、日本酒とのペアリングだ。近年、ラグジュアリーホテルやガストロノミーではワインペアリングが主流となっているが、「りょうぜん 杦 別邸」では、日本料理と日本酒が織りなす豊かな世界を改めて感じさせてくれる。 最初に供されたのは、京都の松井酒造が手掛ける「神蔵」のスパークリング日本酒。繊細な泡と透明感のある旨味が、これから始まる料理への期待を静かに高めていく。続いて供されたのは、「杦」オリジナルの純米吟醸酒をはじめ、一般にはなかなか出会えない銘柄ばかり。
shiroiya_ph07 shiroiya_ph07 料理もまた、この時期ならではの京都の豊かさを映し出していた。平貝や鮑、あさりを寄せ、名残の春キャベツと花山椒を添えた茶碗蒸し仕立ての一皿に始まり、白子筍と桜鯛、鳴門わかめを合わせた椀物、三日熟成させた八幡浜の白甘鯛と無添加の三重県産雲丹のお造りなど、春の恵みが次々と供される。

なかでも印象的だったのが八寸だ。端午の節句や葵祭、新緑の季節にちなみ、双葉葵や青もみじをあしらった盛り付けは、この時期ならではの京都の風情を感じさせる。小夏の器の中には毛蟹やアスパラガス、スナップえんどう、山うどなどの旬菜が詰められ、途中で小夏を搾ることで爽やかな酸味が加わる趣向も楽しい。蛤の鮨を包んだちまきや、青柚子が香るじゅんさい、菖蒲とたらの芽、稚鮎の揚げ物、菜の花やこごみ、こしあぶら、天然わらびなど、一皿ごとに旬の息吹が凝縮されている。旬がわずかな期間しかない食材が惜しみなく用いられ、この季節の美味を一堂に集めたような内容だ。
shiroiya_ph07そして終盤を飾るのは、尾崎牛から独立した赤身肉ブランドとして知られる「梶屋牛」のしゃぶしゃぶ鍋。経産牛をビール粕などの自然飼料でじっくり育て上げたこのブランド黒毛和牛は、赤身の力強い旨味と上質な脂のバランスが絶妙。そこへ旬の花山椒の香りが重なり、京都らしい奥行きある味わいを感じさせられた。
shiroiya_ph07 締めには、炊きたての白米、鰻の玉子とじ、鯖寿司、和風ラーメンの4種類を用意。ひとつだけ選ぶことも、少量ずつ複数を味わうこともできる。どれも捨てがたく、筆者も思わず少しずついただいたが、それぞれ異なる満足感があり、最後まで食の楽しみが尽きない。

コースの始まりから最後の一口まで、「ああ、これが日本であり、京都なのだ」と改めて感じさせる内容だった。日本酒とのペアリングに始まり、山菜や筍、花山椒など旬の味覚が続く前半、そして梶屋牛のしゃぶしゃぶ鍋から締めへと続く一連の体験は、四季を愛でる日本人の美意識を改めて思い起こさせてくれた。「りょうぜん 杦 別邸」での体験は、近年ラグジュアリーホテルで増えているイノベーティブレストランや、海外ゲスト向けに最適化された寿司や鉄板焼きとは一線を画すものだった。

混雑を避けて京都から離れていた人こそ、今あらためて訪れてみてほしい。世界中のゲストを迎えるために磨き上げられたホテルや体験は、私たち日本人にとっても新鮮な発見に満ちている。もう一度訪れたい京都が、そこにはある。

information


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バンヤンツリー・東山 京都

所在地:京都市東山区清閑寺霊山町7番地
Tel:075-531-0500
客室:52室うち温泉付き客室8室
Instagram:https://www.instagram.com/banyantreehigashiyamakyoto/


PR・取材協力:バンヤンツリー・東山 京都