2026年夏、軽井沢に全12室のスモールラグジュアリーホテル「ESSENCE KARUIZAWA(エッセンス 軽井沢)」が開業した。近年、ラグジュアリーの世界では、豪華さや華やかさだけではない、新たな価値観に注目が集まっている。自然との調和や静けさ、余白を大切にし、本質的な心地よさを求める「クワイエットラグジュアリー」という考え方だ。 豊かさとは、何かを足すことではなく、本当に必要なものだけを選び取り、自分らしく過ごせる時間を持つこと。そんな価値観が、旅にも少しずつ広がりを見せている。

自然豊かな軽井沢で、自分の本質と豊かさに原点回帰する。sen

軽井沢駅から車で約5分。豊かな森に囲まれた静かなロケーションに佇む「ESSENCE KARUIZAWA」は、全12室すべてがスイートルームで、プライベートサウナを備えた一軒。建築は「その土地にしかない建築」を追求する建築家・中村拓志氏(NAP建築設計事務所)、インテリアはJamo associatesが手がけ、軽井沢の自然と調和する穏やかな空間を創り上げている。

エントランスを抜けると、宿泊棟とレストラン棟が森の中へ溶け込むように配置され、ゆったりとした時間が流れる。館内には檜を基調としたやわらかなアロマがほのかに香り、自然素材を生かした建築やインテリアとともに、このホテルが掲げる「本質に還る滞在」の世界観をさりげなく表現している。
客室は全12室。66㎡のゲストルーム9室と84㎡のスイートルーム3室で構成され、すべての客室にプライベートサウナとテラスを備える。窓いっぱいに広がるカラマツの森を眺めながら、外気浴を楽しみながらくつろげる。室内には浅間石やカラマツなど軽井沢らしい自然素材を取り入れ、四季を映した落ち着いた色彩でコーディネート。光と影、風の流れまでもデザインに取り込み、自然の延長にいるような心地よさを生み出している。
ベッドには日本ベッド社製の最高級モデルを採用し、オリジナルルームウェアはリカバリーウェアブランド「VENEX」と共同開発。滞在中の睡眠や休息にも細やかな配慮が感じられる。さらに、すべての宿泊プランにはレストラン「SHIN」での食事が含まれており、このホテルが目指す"本質に還る滞在"は、美食体験によって完成する。

ミシュラン二つ星「傳」の哲学を、軽井沢の森で味わう。sen

「ESSENCE KARUIZAWA」の滞在を語るうえで欠かせないのが、宿泊プランに夕朝食が含まれる館内レストラン「SHIN」だ。とりわけ注目なのは夕食。料理を監修するのは、東京・神保町のミシュラン二つ星「傳」の長谷川在佑シェフ。「アジアのベストレストラン50」第1位をはじめ、世界的にも高い評価を受ける日本料理界のトップランナーである。日本の食材や食文化を大切にしながら、独創的な発想で日本料理の新たな魅力を発信し続け、その一皿を目当てに世界中からゲストが訪れる。「傳」といえば、「傳最中」や「傳タッキー」をはじめとする数々のシグネチャーディッシュを生み出してきた名店だ。だからこそ、「SHIN」でどのように長谷川氏の哲学が表現されているのか、期待は自然と高まる。
「SHIN」の厨房を預かるのは、長谷川氏のもとで研鑽を積んだ田中博料理長だ。では早速、その全貌をご紹介しよう。料理の主役となるのは、軽井沢や信州の豊かな自然が育んだ旬の食材。その時季ならではの野菜や山の恵みを取り入れながら、「傳」の哲学とこの土地の風土が美しく重なり合うコースへと仕立てられている。
pullman_01pullman_01左上/信州の豊かな自然が育んだ旬の食材を生かした料理が並ぶ。右上/料理に合わせた日本酒は、長野県上伊那郡・小野酒造店の「夜明け前 純米吟醸」。穏やかな香りと透明感のある味わいが、信州の食材を引き立てる。下/向附 「信州サーモン 縞鯵/海苔酢 本山葵 赤芽紫蘇」。

向附は、熟成させた信州サーモンと縞鯵。添えられる海苔酢は「傳」を象徴する味わいのひとつで、まろやかな酸味と磯の香りが魚の旨味をより一層際立たせる。包丁の入れ方や盛り付けにも「傳」の技法が息づき、シンプルな構成ながら完成度の高さを感じさせた。

合肴では、熟成鰻の揚げ浸しと胡桃、茄子の田楽が登場。この料理は、「傳」がシェイクシャックとのコラボレーションで話題となった"鰻バーガー"を再構築したもの。醤油の香ばしさをまとわせて焼き上げた鰻は、外は香ばしく、中はぷりっと弾力のある食感。単なるシグネチャーの引用に終わらず、「傳」のエッセンスを軽井沢という土地の文脈に落とし込んでいた。
pullman_01pullman_01左上/合肴 「熟成鰻の揚げ浸し 胡桃と茄子の田楽」、右上/逸品「軽井沢大地の恵みサラダ」、下/強肴「信州りんご和牛フィレ焼」。

「傳サラダ」を信州の大地で表現した「軽井沢大地の恵みサラダ」は、一皿の中で素材ごとに揚げる、蒸す、煮る、焼く、生という和食の五法を巧みに使い分け、それぞれの野菜が最もおいしくなる状態で供される。さらに、出汁の考え方を生かした自家製ドレッシングが野菜の旨味を引き立てる。季節によって内容は変わるというが、軽井沢という土地の豊かさを最も実感できる一皿だった。

強肴「信州りんご和牛のフィレ焼」は、きめ細かな肉質と上品な脂の甘みを持つ信州りんご和牛を、シンプルな焼きで提供。塩や本山葵、スパイスで味わいの変化を楽しめるほか、りんごをベースにしたソースやグリーンピースのソースが彩りを添える。信州という土地ならではの食材を存分に味わえる締めくくりとなった。

実際にいただいたコースには、「傳サラダ」などをはじめとするシグネチャーディッシュが随所に盛り込まれ、「傳」らしい世界観をしっかりと感じられる構成に。一方で、それを単に再現するのではなく、軽井沢や信州の旬の食材、とりわけ豊かな野菜を主役に据え、この土地ならではの季節感や滋味を巧みに織り交ぜていた。「傳」の哲学を受け継ぎながらも、ここでしか味わえない一皿へと昇華している点に、大きな魅力を感じた。

すでに「傳」のファンを中心に予約が殺到しているという。しかし、その魅力は料理だけにとどまらない。食や空間、自然が心地よく調和し、さりげなさの中にこそ確かな質の高さを感じさせてくれる。「ESSENCE KARUIZAWA」は、豊かさの本質をあらためて再発見させてくれる一軒だ。

photo by Masakatsu Ikeda
竣工写真:photo: Koji Fujii / TOREAL

information


ESSENCE KARUIZAWA(エッセンス 軽井沢)
所在地:長野県北佐久郡軽井沢町大字長倉字広原21-44
Tel:03-5860-2308
アクセス  :上信越自動車道「碓氷軽井沢IC」より車で約10分
JR「軽井沢」駅南口より車で約5分
バス停「南軽井沢交差点」より徒歩約6分
客室数:全12室(ゲストルーム9室、スイートルーム3室)※2027年夏に同敷地内にヴィラ8棟オープン
e-mail:info@essence-karuizawa.jp
取材協力:ESSENCE KARUIZAWA(エッセンス 軽井沢)