世界最高峰レストラン ジョエル・ロブション - the 20th anniversary -

総料理長 アラン・ヴェルゼロリ × 総支配人 山地誠 スペシャル対談インタビュー

~ ジョエル・ロブションが"最高峰"であり続けた理由 ~

ジョエル・ロブション──。いわずと知れたフレンチの巨匠だ。36歳で独立し、わずか3年後に、史上最短記録でミシュランの3ツ星を獲得。本国フランスはもとより、世界中でいくつものレストランを展開しており、現在、世界で最も多くの星を有している。そのロブション氏の日本進出1号店となる「シャトーレストラン ジョエル・ロブション」にはロブション氏の手掛ける2つのレストランが入っている。2、3階のガストロノミー「ジョエル・ロブション」と1階のカジュアルフレンチレストラン「ラ ターブル ドゥ ジョエル・ロブション」だ。

ここ数年、東京のフレンチシーンは、フランスの3つ星クラスのスターシェフたちが続々と出店。気鋭の日本シェフも個性的な新店をオープンし話題を集めるなど、年々充実度を増している。そんな中でも、「ジョエル・ロブション」は圧倒的な存在だ。1999年の来日以来、総料理長を務めるアラン・ヴェルゼロリ氏、1994年のオープン時から同レストランに勤める総支配人の山地誠氏に、ロブション20年の軌跡を振り返りながら20周年に寄せる思いを聞いた。

シャトーと呼ばれるレストラン。類まれなる豪華さと非日常感。

近隣の人々に「シャトー」の相性で親しまれる「ジョエル・ロブション」。類まれなる豪華さ、非日常感はその外観を一見して見て取れる。
山地:東京にはいくつものフレンチレストランがありますが、「シャトーレストラン ジョエル・ロブション」の最大の特色は、この建物にあると言っていいでしょう。料理やワインだけでなく、フランス文化そのものを伝えたいと、建物からこだわりました。窓枠や扉などはルーブル美術館の補修工事を手がけた業者に発注。ベロー社に特別注文し、外壁や床、螺旋階段に使用している石材は、ジョエル・ロブション氏の故郷であるフランス中西部のショビニで産出されたライムストーンを取り寄せました。「フランスの食文化を通じ、食の楽しさを感じていただきたい」という、ロブション氏の思いを体現するレストランになっています。

ヴェルゼロリ:ロブション氏の口癖のひとつに、「レストランにいらしたことがお客様にとって価値のある経験であってほしい」というのがあります。食材や調理の技術など、料理そのもののクオリティへのこだわりはもちろんですが、空間やサービスを含め、総合的なクオリティを保つことに重きを置いているのです。

山地:シャトーの扉を入ると、そこにフランスがあります。眼に見えるものはほとんどフランスから持ってきました。単に一軒のフレンチレストランがオープンしたというのではなく、ちょうど20年前、ここ恵比寿にフランスの文化そのものが出現し、それが今日まで続いているのです。

ロブションの料理哲学と、20年の感謝を捧げる渾身のスペシャルディナー。

日本上陸20周年を記念し、ガストロノミー「ジョエル・ロブション」では、11月6日(木)、7日(金)の2日間、ジョエル・ロブション氏の立ち会いのもとガラディナーを開催する。その後、11月9日(日)からの1か月間、ガラディナーのお料理を含む特別コースを展開。さらに、1階の「ラ ターブル ドゥ ジョエル・ロブション」でも20周年記念ディナーコースを提供する。
ヴェルゼロリ:ロブション氏のモットーは、"L'experience unique(ユニークな体験)"を提案し、「驚きを楽しんでもらう」こと。事前に細かなメニュー構成についてお知らせすることができないのですが、お客様への感謝を込めた、特別な一皿をご提供します。20周年を記念するにふさわしい、お馴染みのお客さま方の期待にもお応えできる内容のものになることは間違いありません。ガラディナーの2日間はロブション氏も立ち会います。特別な、価値のある時間をお過ごしいただけると思います。

メニュー内容に関しては、まずはロブション氏から電話やメールでイメージが伝えられる。そのアイデアをもとにヴェルゼロリ氏が料理を製作。微細な味の調整は、ロブション氏が来日してから行われる。

ヴェルゼロリ:細部にわたってアレンジしていく作業がぎりぎりまで続きます。

山地:メニュー名もなかなか決まりません。最後まで、もっとも美しいフランス語の表現を探すので、メニューの印刷もぎりぎりなのですよ。最初のお客さまのメニューは印刷があがったばかりで、まだ温かかったりすることもあります(笑)。

今回のような記念日に限らず、ロブション氏は最低でも年に3回は来日。料理はもちろん、パン、インテリア、テーブルクロス、照明の明るさまで、細部までチェックを行う。

ヴェルゼロリ:メニューの文字のフォントや色、BGMの音量までくまなくチェックをするのです。どうです?日本の皆さんに対する彼の愛が感じられるでしょう?(笑)。

山地:2階のレストランにはデギュスタシオンコースという12皿で構成されるコースがあるのですが、これはロブション氏が日本の懐石料理からインスピレーションを得たもの。平べったい丸いお皿を使うのが基本だったフランス料理業界で、石の素材やガラスのお皿を使いはじめ、それを一般化したのはロブション氏なのですよ。

悦びと、驚きと。ここでしか体験できない特別な時間。

世界の美食家たちが賛辞をおくるグランメゾンで、吟味された最高級の素材を、「世紀最高のシェフ」と称されるシェフが選びだした調理法で嗜む──。誰もが憧れる体験だが、敷居の高さを感じ、身構えてしまう人もいるのではないだろうか。
山地:シャトーはかなりインパクトも強いですし、たしかに日本でいちばん入りづらいレストランかもしれませんね(笑)。ただ、実際に足をお運びいただければ、料理からワイン、おもてなし、空間、すべてにこだわり抜いた、ここでしか体感できない特別なお時間をお過ごしいただけると思います。誕生日や結婚記念日など、きっかけを作って、ぜひ一度、トライしてみてください。ホームページからの予約も可能です。

ヴェルゼロリ:旬の一番いい食材を取り揃えているので、いついらしていただいても必ず美味しいものをご提供できます。また、グランメゾンと言われる、格式の高いカテゴリーであっても、あまりお客様が堅苦しく感じず、心地よく時間をお過ごしいただけるようなサービスを心掛けています。

フレンチレストランの常識を覆す、ジョエル・ロブションの

ことの発端は10年前。2004年12月、それまでコラボレーションレストランとして共同出店していた「タイユヴァン」が手を引き、ロブションが単独でシャトーを手掛けることになる。店名もオープン時の「タイユヴァン・ロブション」から現在の「シャトーレストラン ジョエル・ロブション」に変わり、新たなスタートを切った。リニューアル時、内装は人気デザイナーの森田恭通氏が手掛けた。ダイニングのシャンデリアや、テーブルのスタンド照明には、バカラやスワロフスキーのクリスタルが煌びやかな輝きを放っている。
山地:私どもサービスのスタッフはそれまでタキシードを着ていたのですが、リニューアルの際、ロブション氏から、「これからの時代にタキシードはそぐわない。それだけはやめてくれ」とお願いされました(笑)。現在はネクタイで接客させていただいていますが、本当はそれもやめて欲しいようです(笑)。たしかに、ロブション氏がタイをしている姿はほとんど見たことがありません。リニューアルを機に、お客様のドレスコードについても、「お客様は元気になるためにレストランに来るのだから、制約をつけることはないじゃないか。面接に来ているわけじゃないのだから」とおっしゃいます。

ヴェルゼロリ:2階のダイニングのテーブルクロスを黒に変えたのもその時です。それまでグランメゾンのクロスといえば白と決まっていて、黒はタブー視されていたのです。

山地:でも実際にやってみたら、違和感がなかったんですよ。白いお皿の料理も映えます。

ヴェルゼロリ:ソムリエは慌てていたけれどね(笑)。黒いクロスを背景に、ワインの色を見なければなりませんからね。

山地:新しいもの好きで、iPhoneや家電なども常に新しいものを持っているんですよ。一緒にやっていて飽きることはありません。

ヴェルゼロリ:ワインリストのiPad化もそのひとつです。20年間、「ジョエル・ロブション」は、サービスから料理の傾向まで、さまざまな面において、常に進化し続けていました。そしてこれからもそのエキサイティングな挑戦を続けていきます。

山地:ゴージャスな内装と清潔な卓上、気のきいたサービス、そして、何より美味しいお料理──。すべてのクオリティをキープして、さらに新たなものを築いていくこと、それが私たちに課せられた使命だと考えています。